はじめに:ALC外壁塗装で失敗しないために
ALC(発泡気泡軽量コンクリート)は、戸建て住宅で広く採用されている外壁材の一つです。
このALC外壁の塗装で最も多い失敗例が、塗膜の「フクレ(膨れ)」です。
ALCパネルの表面は細かな凹凸のある粗面(そめん)であり、この凹凸に空気が閉じ込められてしまうことがあります。塗装後、壁面が直射日光などで温められると、閉じ込められた空気が膨張し、塗膜を内側から押し上げてフクレを発生させてしまうのです。
この記事では、こうした失敗を防ぎ、満足のいく塗装工事を実現するために、施主様が契約前に必ず確認すべきことを、全工程に沿って50年の塗装経験から解説します。
1. 塗装工事の契約前に知っておくべき全体の流れ
塗装工事を依頼してから契約に至るまでのプロセスは、大きく分けて3つのステップで進みます。
【契約までの3ステップ】
- 現場調査・診断:専門家が建物の現状を詳細に調査・診断
- 提案・見積書:調査結果に基づき、具体的な工事内容と費用を提示
- 契約:提案内容に合意した上で、正式な工事契約を締結
この流れを事前に把握しておくことが重要です。
2. ステップ1:専門家による正確な「現場調査・診断」
塗装工事の品質は、着工前の「現場調査・診断」の精度に大きく左右されます。
私が提唱する「塗装方程式」では、品質 = モチベーション × 技術 × 時間と表現しています。現場調査に「時間」をかけられる業者は、その後の施工でも丁寧な仕事が期待できます。
調査診断書で確認すべき項目
- 外壁材の種類:ALCであることが明記されているか
- 劣化状況:汚れ、ひび割れ、塗膜の剥がれ、チョーキングの有無
- 写真記録:劣化箇所の写真が添付されているか
10分程度の簡単な確認で契約を急かす業者は避けましょう。信頼できる業者は、最低でも60分程度の時間をかけて建物を隅々まで確認します。
3. ステップ2:最重要!「提案・見積書」のチェックポイント
業者から提出される「提案書」と「見積書」を精査することは、施主様にとって最も重要な工程です。
信頼できる業者は、提案書と見積書を通じてお客様に専門知識を伝え、その技術力を証明しようとします。逆に、書類上で詳細を曖昧にする業者は、施工プロセスそのものを隠そうとしているのと同じです。
3.1 【ALC外壁の最重要点】下地調整に「フィラー」が含まれているか
ALC外壁の塗装において、絶対に外せない最重要チェックポイントがこれです。
提案書や見積書内の下地調整の工程に、「フィラー」という材料の使用が明記されているか必ず確認してください。
なぜフィラーが必要なのか?
ALCパネルの粗面を、ミクロ単位の無数のポケットを持つ風景だと想像してみてください。
- フィラーを使わない塗装:ポケットに蓋をするだけで、中に空気を閉じ込めてしまう
- 太陽の熱で壁が温められる:閉じ込められた空気が膨張
- 結果:内側から塗膜を押し上げて「フクレ」が発生
拙著『塗装方程式』でも解説していますが、下塗り材(シーラー・プライマー・フィラーなど)は下地と上塗り塗料の接着剤として機能し、下塗りを省略すると早期剥離の原因になります。
ALC外壁の塗装において、フィラーによる下地調整は、美しく長持ちする塗膜を実現するための必須工程です。
3.2 工事の全容がわかる「塗装仕様書」
「塗り替え塗装仕様書」は、どのような工事が、どの手順で、何を使って行われるかを示す、いわば工事の設計図です。
【塗装仕様書の確認項目】
- 工程:「高圧水洗」「下地調整」「下塗り」「中塗り」「上塗り」が明確に示されているか
- 塗料名:各工程で使用する塗料の具体的な商品名(例:「水系微弾性フィラー」など)
- 塗り回数:下塗り1回、中塗り1回、上塗り1回など
- 乾燥時間:次の塗料を塗るまでに必要な乾燥時間が規定されているか
「1日1工程」が品質の基本
理想的には「1日1工程」、すなわち下塗り・中塗り・上塗りをそれぞれ別の日に行い、各層を十分に乾燥させるべきです。
焦って塗り重ねると内部の水分が閉じ込められ、後から膨れや剥離の原因になります。
3.3 「一式」は危険!詳細な「見積書」
見積書において、「〇〇工事一式」のように、詳細な内訳がわからない項目は危険信号です。詳しくは良い塗装業者が絶対にしないこと5選もご覧ください。
拙著『外壁塗装の不都合な真実』でも警告していますが、「一式」表記は手抜きをごまかすための隠れ蓑になり得ます。
見積書に個別記載されるべき項目
- 足場架設費:単価と数量が明記されているか
- 外壁水洗い:高圧洗浄の費用
- シーリング処理:打ち替えか増し打ちか明記
- 下地調整:フィラー使用が明記されているか(ALC最重要)
- 外壁塗装:下塗り・中塗り・上塗りが分離記載されているか
人工(にんく):何人の職人が何日かけるか(20〜25人工が目安)
また、工事中に予期せぬ劣化箇所が見つかった場合の「追加工事」の可能性や、その場合の対応についても事前に確認しておくと安心です。
4. ステップ3:安心してサインするための「契約」前の最終確認
提案内容と見積金額に納得したら、いよいよ契約です。しかし、サインをする前にもう一度確認すべき重要事項があります。
4.1 保証と保険の内容を確認する
工事後の保証や万が一の事故に備える保険について、内容をしっかり確認しましょう。
【保証の種類と特徴】
- 業者独自の工事保証:業者が倒産すれば無効になるリスクあり
- リフォーム工事瑕疵保険:業者が倒産しても保険法人から直接保険金が支払われる
特にリフォーム工事瑕疵保険への加入の有無は重要なチェックポイントです。
4.2 「工事請負契約書」の必須項目
契約は必ず正式な「工事請負契約書」を用いて行います。
【契約書の必須項目】
- 工事内容:具体的な作業内容
- 請負代金の額:総額と内訳
- 工事着手の時期:着工日
- 工事完成の時期:完工予定日
- 請負代金の支払の時期及び方法:前払い・完了払いの割合など
- 瑕疵担保責任:工事後に不具合が見つかった場合の保証
5. まとめ:契約前のチェックがALC外壁塗装の成功を左右する
ALC外壁の塗装を成功させる鍵は、契約前の入念なチェックにあります。
ALC外壁塗装の3つの必須チェックポイント
- フィラーによる下地処理が明記されているか
ALC外壁の「フクレ」を防ぐ最重要ポイント
- 見積書に「一式」表記が多用されていないか
各工程の単価・数量・人工が明記されているか確認
- 1日1工程の乾燥時間が確保された工程表になっているか
塗装方程式の「時間」が品質を左右する
これらのチェックポイントを、単に工事を承認するためだけでなく、あなたの大切なご自宅の価値を守り、高めてくれる真のプロフェッショナルを選ぶための基準としてご活用ください。
あなたの見積書、適正ですか?
「この見積もり、本当にフィラーが含まれている?」「人工は適正?」と不安に思ったら、セカンドオピニオンをご活用ください。50年の経験を持つ塗装のプロが、人工の観点から見積書を診断します。→ 見積書診断サービス(3,000円)
見積書、このままで大丈夫?
50年の現場経験を持つ診断アドバイザーが、あなたの見積書をチェックします。 適正価格か、工程に問題はないか、第三者の目で確認してみませんか?
無料で相談する※ 営業目的の連絡は一切いたしません
プロが使う人工数比較シートを無料プレゼント
見積書の「人工数」を比較して、手抜き業者を見抜く
※ 個人情報は厳重に管理し、第三者に提供することはありません