「小雨なら問題ありませんよ」
業者からこう言われたら、要注意です。
塗装には「塗ってはいけない天候条件」があります。これを無視した施工は、数年後に塗膜の剥がれや膨れとして現れます。
この記事では、塗装業50年の経験から、塗装に適した天候条件と契約前に確認すべきポイントを解説します。
この記事で分かること
・塗装NGの天候条件(気温・湿度・天気)
・雨天時に塗装するとどうなるのか
・季節ごとの注意点(梅雨・冬季・夏季)
・「小雨なら大丈夫」が危険な理由
・契約前に確認すべき質問
・天候による工期延長への対応
塗装NGの天候条件
塗料メーカーが定める施工条件
塗料メーカーは、塗料が本来の性能を発揮するための施工条件を定めています。
【気温】5℃以下:NG
【気温】5℃〜35℃:OK
【湿度】85%以上:NG
【湿度】85%未満:OK
【天気】雨天・降雪:NG
【天気】晴れ・曇り:OK
【強風】風速10m/s以上:NG
この条件を守らないと、塗料は本来の性能を発揮できません。
なぜこれらの条件があるのか?
気温5℃以下の場合:
・塗料の乾燥・硬化が極端に遅くなる
・塗膜が正常に形成されない
・早期の剥離・ひび割れの原因に
湿度85%以上の場合:
・塗膜表面に水分が付着する
・乾燥不良を起こす
・白化(ブラッシング)現象が発生
雨天の場合:
・塗料が雨水で流れる
・塗膜に水分が混入する
・密着不良の原因に
雨天時に塗装するとどうなる?
起こりうる問題
雨天時や高湿度時に塗装を行うと、以下の問題が発生します。
【密着不良】塗膜が下地から剥がれる(数ヶ月〜数年後)
【白化現象】塗膜が白く濁る(塗装直後〜数日後)
【光沢不良】ツヤが出ない、ムラになる(塗装直後)
【乾燥不良】いつまでもベタつく(塗装直後)
【膨れ・剥離】塗膜が膨れて剥がれる(数ヶ月〜数年後)
ポイント:これらの問題は塗装直後には分からないことが多く、数年後に発覚するケースがほとんどです。
実際のトラブル事例
事例1:小雨での塗装
・状況:「小雨程度なら大丈夫」と言われて塗装を続行
・結果:1年後に塗膜が剥がれ始めた
・原因:塗膜に水分が混入し、密着不良を起こした
事例2:湿度が高い日の塗装
・状況:梅雨時期に「早く終わらせたい」と塗装を強行
・結果:塗膜が白く濁った(白化現象)
・原因:高湿度により塗膜表面に結露が発生
事例3:気温が低い日の塗装
・状況:冬の朝8時から日陰の北面を塗装
・結果:2年後に塗膜が膨れてきた
・原因:気温条件を無視した施工で硬化不良
季節ごとの注意点
梅雨時期(6〜7月)
最も注意が必要な時期です。
【リスク】
・高湿度:連日85%以上になることも
・急な雨:塗装中に突然の雨
・乾燥遅延:乾燥時間が通常の1.5〜2倍
・工期延長:雨天で作業中止が続く
【対策】
・梅雨時期の塗装は避けるか、余裕のある工期を設定
・天気予報を確認し、3日以上晴れが続く日を選ぶ
・湿度が高い日は塗装を中止する
冬季(12〜2月)
気温条件に注意が必要です。
【リスク】
・低気温:朝晩は5℃以下になることも
・結露・霜:朝は外壁が濡れている
・日陰面:日が当たらず乾燥しない
・短い日照:作業時間が限られる
【対策】
・朝8時〜9時は塗装を開始しない(壁面が乾いてから)
・北面・日陰面は午後の暖かい時間帯に塗装
・夕方16時以降は塗装を終了する(夜露対策)
夏季(7〜8月)
一見良さそうに見えて、実は注意が必要です。
【リスク】
・高温:35℃以上は塗装NG
・急速乾燥:表面だけ乾いて内部が生乾き
・夕立:午後の突然の雨
・直射日光:塗料が熱で変質
【対策】
・35℃以上の日は塗装を中止
・直射日光が当たる面は早朝か夕方に塗装
・午後の夕立を考慮した工程管理
春・秋(3〜5月、9〜11月)
塗装のベストシーズンです。
【メリット】
・適温:15〜25℃で塗料が最も性能を発揮
・適湿:湿度が安定している
・乾燥良好:標準的な乾燥時間で硬化
・工期安定:天候による延長が少ない
【注意点】
・春は花粉・黄砂が塗膜に付着することも
・秋は台風シーズンと重なる可能性
「小雨なら大丈夫」が危険な理由
悪質業者のよくある言い訳
「小雨なら問題ありません」
「屋根があるところなら塗れます」
「今日中に終わらせないと工期が延びます」
これらは品質よりも工期を優先した危険な発言です。
なぜ工期を優先するのか?
・足場レンタル費:足場を長期間借りるとコスト増
・人件費:工期が延びると人件費が増加
・次の現場:次の工事が控えている
・下請け構造:元請けからの工期プレッシャー
ポイント:品質を優先する業者は、天候が悪ければ作業を中止します。それが当たり前の対応です。
2024年建設業法改正
2024年の建設業法改正により、「工期を極端に短く設定した契約」は禁止事項となりました。
しかし現場では、いまだに無理なスケジュールが押し付けられることがあります。施主として、天候による工期延長を受け入れる姿勢が大切です。
契約前に確認すべき質問
質問1:雨の日はどうしますか?
「雨が降ったら、どう対応しますか?」
【良い回答例】「塗装作業は中止し、翌日以降に延期します」
【要注意な回答例】
・「小雨なら問題ありません」
・「屋根があるところなら塗れます」
・「養生で雨を防げば大丈夫です」
質問2:気温や湿度の基準はありますか?
「塗装を中止する気温・湿度の基準はありますか?」
【良い回答例】「気温5℃以下、湿度85%以上の場合は作業を中止します」
【要注意な回答例】
・「特に基準はありません」
・「職人の判断に任せています」
質問3:天候で工期が延びた場合は?
「雨で工期が延びた場合、追加費用はかかりますか?」
【良い回答例】「天候による延長の場合、追加費用はいただきません」
注意点:契約書に「天候による工期延長の取り扱い」が明記されているか確認しましょう。
質問4:梅雨時期の工事で大丈夫ですか?
「○月の工事を予定していますが、梅雨時期でも大丈夫ですか?」
【良い回答例】「梅雨時期は天候が不安定なので、余裕を持った工期を設定します」
【要注意な回答例】「問題ありません。予定通り進めます」
天候ルールの確認チェックリスト
契約前に、以下の項目を確認しておきましょう。
□ 雨天時は作業を中止するか
□ 気温5℃以下では作業を中止するか
□ 湿度85%以上では作業を中止するか
□ 天候による工期延長の追加費用はないか
□ 工程表に天候予備日が含まれているか
□ 梅雨・冬季の場合は余裕のある工期か
工程ごとの天候リスク
天候の影響を受けやすい工程
【高圧洗浄】天候リスク:低/雨天でも実施可能だが、翌日以降の乾燥が必要
【下地処理】天候リスク:中/湿った状態での補修は密着不良の原因
【下塗り】天候リスク:高/気温・湿度の影響を最も受ける
【中塗り】天候リスク:高/乾燥不足のまま塗ると剥離の原因
【上塗り】天候リスク:高/仕上がりに直結、天候条件を厳守
【養生撤去】天候リスク:低/塗膜が完全に乾燥してから
塗装工程は「3日連続の晴れ」が理想
下塗り・中塗り・上塗りの塗装工程では、最低でも3日連続の晴れが理想です。
1日目(晴れ):下塗り → 乾燥
2日目(晴れ):中塗り → 乾燥
3日目(晴れ):上塗り → 乾燥
途中で雨が降ると、乾燥が遅れて工程が延びます。
施工管理アプリで天候対応を可視化
施工管理アプリを使えば、天候による工程変更をリアルタイムで確認できます。
アプリでできること
・工程表の共有:「今日は雨で中止」をLINEで通知
・天候記録:各工程の天候条件を記録
・乾燥時間管理:塗料メーカーの指示に基づいた乾燥時間を自動計算
・工期延長の可視化:延長理由と新しい完了予定日を共有
「なぜ工期が延びたのか」「いつ再開するのか」を施主自身で確認できます。
まとめ:天候ルールは品質を守る基本
【気温】5℃以下:塗装中止
【湿度】85%以上:塗装中止
【天気】雨天・降雪:塗装中止
【強風】10m/s以上:塗装中止
「小雨なら大丈夫」「今日中に終わらせたい」は危険信号です。
天候条件を守らない塗装は、数年後に必ずトラブルとして現れます。契約前に天候ルールを確認し、品質を優先する業者を選びましょう。
天候で工期が延びるのは「当たり前」です。それを受け入れる姿勢が、良い塗装への第一歩です。
よくある質問(FAQ)
Q. 雨の日に高圧洗浄はできますか?
A. 高圧洗浄自体は可能ですが、洗浄後に1日以上の乾燥時間が必要です。雨が続くと乾燥が遅れるため、工期に影響します。
Q. 曇りの日は塗装できますか?
A. 湿度が85%未満であれば可能です。ただし、曇りの日は湿度が高くなりやすいため、湿度計で確認してから塗装を開始するのが理想です。
Q. 梅雨時期の塗装は避けるべきですか?
A. 可能であれば避けるのが理想です。梅雨時期に塗装する場合は、通常より1週間〜10日程度余裕のある工期を設定しましょう。
Q. 冬に塗装しても大丈夫ですか?
A. 条件を守れば可能です。ただし、朝晩の気温低下、日陰面の乾燥遅延などを考慮し、作業時間は10時〜15時頃に限定されます。工期は夏の1.5〜2倍を見込みましょう。
Q. 天候で工期が延びたら追加費用がかかりますか?
A. 通常はかかりません。ただし、契約書に明記されているか確認しましょう。「天候による延長は追加費用なし」と記載があれば安心です。
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この記事は、塗装業50年の経験と「塗装方程式」の知見に基づいて作成されています。
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