「高圧洗浄って、ただ水で洗うだけでしょ?」
多くの施主がそう思っています。しかし、高圧洗浄は外壁塗装の品質を左右する極めて重要な工程です。
高圧洗浄が不十分だと、どんなに高級な塗料を使っても、数年で剥がれてしまいます。汚れやカビの上から塗料を塗っても、密着しないからです。
この記事では、塗装業50年の経験から、高圧洗浄で施主が確認すべきポイントと、適正な洗浄時間の目安を解説します。
この記事で分かること
- 高圧洗浄の役割と重要性
- 適正な洗浄時間の目安
- 施主が見るべき確認ポイント
- 高圧洗浄の手抜きパターンと見分け方
- 洗浄後の乾燥時間について
高圧洗浄の役割と重要性
なぜ高圧洗浄が必要なのか
高圧洗浄は、塗料を密着させるための「下準備」です。
外壁には、長年の間に以下のようなものが付着しています。
- 埃・砂:風で運ばれてきた微細な粒子
- 排気ガス:車の排気ガスによる油分
- チョーキング:旧塗膜が劣化して粉状になったもの
- カビ・藻:特に北側や日当たりの悪い場所
- コケ:湿気の多い場所
- 蜘蛛の巣・虫の死骸:軒下や窓まわり
これらの汚れの上から塗料を塗ると、塗料は汚れに密着してしまいます。汚れが剥がれれば、塗料も一緒に剥がれる。これが「塗装が長持ちしない」原因の一つです。
高圧洗浄を省くと何が起こる?
高圧洗浄を省略したり、不十分な洗浄で済ませると、以下の問題が発生します。
私の著書『外壁塗装の不都合な真実』でも触れていますが、塗装は塗るまでの下地処理が命です。どんなに良い塗料を使っても、下地処理が不十分では長持ちしません。
高圧洗浄は「見えなくなる」工程
高圧洗浄は、塗装が終われば見えなくなります。
「ちゃんと洗浄したかどうか」は、完成後には分かりません。だからこそ、高圧洗浄の段階で確認することが重要なのです。
適正な洗浄時間の目安
一般的な戸建て住宅の場合
延床30坪程度の戸建て住宅の場合、高圧洗浄には以下の時間が目安となります。
「半日〜1日」が高圧洗浄の適正時間です。
これより極端に短い場合は、洗浄が不十分な可能性があります。
洗浄時間が短すぎる場合の問題
「高圧洗浄は2時間で終わりました」
こう報告があった場合、要注意です。30坪の家の外壁・屋根を2時間で洗浄するのは、物理的にかなり困難です。
短時間で終わる理由として考えられるのは:
- 水圧を下げて「流しただけ」
- 汚れの多い箇所を飛ばしている
- 細部(入隅・裏側)を洗っていない
- 屋根を洗浄していない
汚れの程度で時間は変わる
外壁の汚れ具合によって、必要な洗浄時間は変わります。
時間がかかるケース:
- 北側にカビ・藻が多い
- チョーキングがひどい
- 築年数が長く汚れが蓄積している
- リシン・スタッコなど凹凸が多い仕上げ
比較的早く終わるケース:
- 築10年以内で汚れが少ない
- 南面が多く日当たりが良い
- フラットなサイディング外壁
ただし、どんなに汚れが少なくても、最低3時間以上はかかると考えてください。
施主が見るべき確認ポイント
ポイント1:北側の外壁
最も重要なチェックポイントは、北側の外壁です。
北側は日当たりが悪く、カビや藻が発生しやすい場所。高圧洗浄でしっかり除去しないと、塗装後もカビが塗膜の下で繁殖し、早期に膨れや変色の原因になります。
確認方法:
- 洗浄前:緑色や黒色のカビ・藻がないか確認
- 洗浄後:カビ・藻が完全に除去されているか確認
- 触ってみる:ヌルヌルした感触が残っていないか
見落としやすいポイント:
- 給湯器の裏側
- エアコン室外機の裏側
- 物置・カーポートの影になる部分
ポイント2:軒天(のきてん)
軒天は屋根の裏側部分。雨が直接当たらないため、埃や蜘蛛の巣が溜まりやすい場所です。
確認方法:
- 洗浄後、蜘蛛の巣や虫の死骸が残っていないか
- 埃の跡が残っていないか
- 換気口まわりも洗浄されているか
注意点:
軒天は「上を向いて洗浄する」作業のため、職人も見落としやすい場所です。
ポイント3:雨樋(あまどい)の内側
雨樋の内側には、落ち葉や泥が溜まっていることがあります。
確認方法:
- 雨樋の中にゴミが残っていないか
- 集水器(縦樋との接続部分)が詰まっていないか
注意点:
雨樋の内側は塗装しませんが、洗浄時に一緒に清掃してもらえると安心です。事前に依頼しておきましょう。
ポイント4:窓枠・サッシまわり
窓枠やサッシのまわりは、汚れが溜まりやすく、養生との境目にもなる重要な箇所です。
確認方法:
- 窓枠の隅に汚れが残っていないか
- サッシのレールに泥が残っていないか
- 窓ガラスに汚れが飛散していないか
ポイント5:基礎まわり
基礎(コンクリート部分)と外壁の境目も、汚れが溜まりやすい場所です。
確認方法:
- 基礎と外壁の境目に泥跳ねが残っていないか
- 基礎にカビや苔が残っていないか
注意点:
基礎部分は塗装範囲外のことが多いですが、汚れが残っていると仕上がりの印象が悪くなります。
ポイント6:屋根(洗浄する場合)
屋根の高圧洗浄は、地上からは確認しにくい場所です。
確認方法:
- 洗浄前後の写真を撮ってもらう
- コケや汚れが除去されているか写真で確認
- 棟板金まわりも洗浄されているか確認
注意点:
スレート屋根(カラーベスト・コロニアル)は、高圧洗浄で割れることがあります。洗浄後に割れた箇所がないか確認しましょう。
高圧洗浄の手抜きパターンと見分け方
パターン1:洗浄時間が極端に短い
最も多い手抜きは、洗浄時間の短縮です。
見分け方:
- 工程表で高圧洗浄の日数を確認
- 「洗浄は午前中で終わりました」→ 要確認
- 30坪の家で2〜3時間は短すぎる
対策:
事前に「高圧洗浄にはどれくらい時間がかかりますか?」と確認しておく。
パターン2:水圧が低い
高圧洗浄機の水圧を下げて、「流しているだけ」の状態。
見分け方:
- 洗浄後もチョーキングが残っている(触ると粉がつく)
- カビ・藻の跡が残っている
- 汚れのラインが見える
確認方法:
洗浄後に外壁を触ってみましょう。チョーキングが残っていれば、洗浄不十分です。
パターン3:細部を洗っていない
入隅(内側の角)や裏側など、洗いにくい場所を省略。
見分け方:
- 入隅に汚れが残っている
- 配管・室外機の裏側が汚い
- 雨樋の裏側が洗われていない
確認方法:
足場があるうちに、細部を確認しましょう。
パターン4:足場設置当日に洗浄して塗装開始
足場を設置した当日に洗浄し、翌日から塗装を始めるパターン。
問題点:
- 洗浄時間が短くなりがち
- 乾燥時間が不十分
見分け方:
工程表を確認。足場設置と高圧洗浄が同じ日、かつ翌日から塗装開始なら要注意。
パターン5:カビ・藻の殺菌処理をしていない
高圧洗浄だけではカビの根まで除去できないことがあります。
見分け方:
- 北側にカビが多かった場合、殺菌剤(バイオ洗浄)の使用有無を確認
- 洗浄後もカビの跡(黒ずみ)が残っている
対策:
カビが多い外壁の場合、「バイオ洗浄」や「殺菌剤」を使用するか事前に確認しておく。
洗浄後の乾燥時間について
洗浄後は乾燥が必要
高圧洗浄後、すぐに塗装を始めてはいけません。
外壁が濡れた状態で塗装すると、塗料の密着が悪くなり、膨れや剥がれの原因になります。
乾燥時間の目安:
乾燥を確認する方法
確認方法:
- 外壁を触って湿り気がないか
- 日陰や北側の面も乾燥しているか
- 入隅や窓下など水が溜まりやすい場所もチェック
注意点:
表面が乾いていても、内部に水分が残っていることがあります。特に冬場や曇天の場合は、乾燥時間を長めに取る必要があります。
乾燥不十分のまま塗装するとどうなる?
乾燥が不十分なまま塗装すると、以下の問題が発生します。
- 塗膜の膨れ:内部の水分が蒸発しようとして膨れる
- 密着不良:塗料が水分に弾かれて密着しない
- 白化(ブラッシング):塗膜が白っぽくなる
- 早期劣化:塗膜の耐久性が低下
高圧洗浄完了時のチェックリスト
高圧洗浄が完了したら、以下のポイントを確認しましょう。
確認チェックリスト
- [ ] 北側の外壁:カビ・藻が除去されているか
- [ ] 軒天:蜘蛛の巣・埃が除去されているか
- [ ] 入隅・出隅:汚れが残っていないか
- [ ] 窓枠・サッシまわり:汚れが残っていないか
- [ ] 配管・室外機の裏側:洗浄されているか
- [ ] 基礎まわり:泥跳ねが残っていないか
- [ ] チョーキング:触っても粉がつかないか
- [ ] 洗浄時間:適正な時間(半日〜1日)かかったか
- [ ] 洗浄前後の写真:撮ってもらったか
写真記録のポイント
高圧洗浄の前後に、以下の写真を撮ってもらいましょう。
- 洗浄前(四方から全景)
- 洗浄後(四方から全景)
- 北側の外壁(カビ・藻の除去状況)
- 細部(入隅・裏側など)
- 屋根(洗浄する場合)
よくある質問(FAQ)
Q. 高圧洗浄で窓ガラスは割れませんか?
A. 通常は割れません。ただし、ひび割れがある窓や、古い網入りガラスは注意が必要です。事前に業者に窓の状態を伝えておきましょう。
Q. 高圧洗浄の水道代は誰が払いますか?
A. 通常は施主負担です。高圧洗浄で使用する水量は、30坪の家で約300〜500リットル程度。水道代は数百円〜1,000円程度です。見積書に「水道代は施主負担」と記載されていることが多いので確認しましょう。
Q. 雨の日に高圧洗浄しても大丈夫ですか?
A. 作業自体は可能ですが、おすすめしません。雨の日は洗浄後の乾燥に時間がかかり、工程全体に影響します。また、滑りやすく危険です。
Q. 高圧洗浄をしないで塗装する業者がいると聞きましたが…
A. 絶対に避けるべきです。高圧洗浄を省略する業者は、下地処理を軽視している可能性が高く、塗装の品質に問題が出る確率が高いです。見積書に「高圧洗浄」が含まれているか必ず確認しましょう。
Q. バイオ洗浄とは何ですか?
A. 殺菌剤を使った洗浄方法です。通常の高圧洗浄では除去しきれないカビや藻の根を、殺菌剤で処理します。北側にカビが多い場合や、過去にカビが再発した経験がある場合は、バイオ洗浄を依頼することをおすすめします。追加費用がかかることが多いので、事前に確認しましょう。
まとめ:高圧洗浄は「下地処理の第一歩」
高圧洗浄は、外壁塗装の品質を左右する重要な工程です。
適正な洗浄時間の目安:
- 外壁のみ:半日(3〜5時間)
- 外壁+屋根:丸1日(6〜8時間)
施主が見るべき確認ポイント:
- 北側の外壁(カビ・藻の除去)
- 軒天(蜘蛛の巣・埃)
- 入隅・裏側(細部の洗浄)
- チョーキングの除去(触って確認)
- 洗浄後の乾燥状態
高圧洗浄の手抜きパターン:
- 洗浄時間が極端に短い
- 水圧が低い(流しているだけ)
- 細部を洗っていない
- 乾燥時間を取っていない
「塗装は塗るまでの下地処理が命」です。高圧洗浄をしっかり確認することで、長持ちする塗装工事につながります。
施工管理アプリで高圧洗浄を確認
施工管理アプリでは、高圧洗浄の工程も管理できます。
- 洗浄開始・完了のLINE通知
- 洗浄前後の写真記録
- 乾燥時間のチェック機能
- チェックリストで確認漏れを防止
「ちゃんと洗浄してくれたかな…」という不安を解消できます。
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この記事は、塗装業50年の経験を持つ職人監修のもと作成されています。
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