「お風呂場の外壁だけ、なぜかボロボロになっている」
こんな症状に心当たりはありませんか?
実はこれ、「凍害(とうがい)」という現象が原因かもしれません。そして、安易に塗装しても数年で剥がれてしまう厄介な問題です。
この記事では、塗装業50年の経験から、浴室周りの外壁が劣化しやすい理由と正しい補修方法を解説します。
この記事で分かること
・凍害とは何か、なぜ起きるのか
・浴室周りで凍害が発生しやすい3つの理由
・直貼り工法と通気工法の違い
・劣化レベルの自己診断方法
・正しい補修方法の選び方
・塗装では直らない理由
・内部からの予防対策
こんな症状が出ていませんか?
浴室周りの外壁に、以下のような症状が見られたら要注意です。
【初期】外壁を触ると白い粉がつく(チョーキング)
【中期】塗膜が膨れている、浮いている
【末期】表面が層状に剥がれ落ちている
【末期・危険】指で触ると崩れる、ボロボロ
【末期・危険】穴が開いている(ポップアウト)
特に浴室の窓の下や換気扇フードの周辺、北面の外壁でこれらの症状が見られる場合、凍害の可能性が高いです。
凍害とは?メカニズムを分かりやすく解説
水が凍ると体積が9%増える
凍害とは、外壁材の内部に浸透した水分が凍結・膨張を繰り返すことで、建材が破壊される現象です。
水は液体から氷になるとき、体積が約9%膨張します。この膨張圧力が、外壁材の内部から押し広げるように作用し、建材を破壊していきます。
凍結融解サイクルの恐怖
凍害は「常に凍っている」寒冷地よりも、「夜間に凍結し、日中に融解する」を繰り返す地域で発生しやすいことが分かっています。
夜間:気温低下 → 外壁内部の水分が凍結 → 膨張
日中:気温上昇 → 氷が融解 → 収縮
この凍結融解サイクルが繰り返されることで、外壁材に微細な亀裂が入り、やがて目に見える破壊へと進行します。
関東以西の内陸部でも、最低気温がマイナス2度を下回る地域では凍害リスクがあります。
凍害の進行段階
【第1段階】塗膜の膨れ・浮き:内部の水分が凍結し、塗膜を裏側から押し上げる
【第2段階】スケーリング(表面剥離):表面が薄い層状に剥がれ落ちる
【第3段階】ポップアウト・崩壊:一部が弾き飛ばされる、ボロボロに崩れる
第3段階まで進行すると、外壁としての機能を完全に喪失し、雨水が建物内部に直接侵入する危険な状態になります。
なぜ「浴室周り」で凍害が発生しやすいのか?
家全体の中で、浴室周りの外壁は最も凍害リスクが高い部位です。その理由は3つあります。
理由1:内部結露による裏面からの吸水
浴室は、入浴時に大量の温かい水蒸気が発生する空間です。
冬季において、暖かい浴室と氷点下の外気との間には、激しい温度差が生じます。この温度差によって、浴室内の湿気が壁体を透過して外へ逃げようとします。
この湿気が外壁材の裏面(冷たい外気側)に到達すると、冷却されて液体の水に変化します。これが「内部結露」です。
【内部結露のポイント】
・外側からの雨水と異なり、日照による乾燥が期待できない
・外壁材を裏側から濡らし続ける
・サイディングを恒常的な湿潤状態に置く
つまり、浴室周りの外壁は「常に水分を含んだ状態」になりやすく、凍害の発生条件が揃いやすいのです。
理由2:北面配置による乾燥不足
日本の住宅設計では、浴室・洗面所・トイレなどの水回りは、リビングや居室の日当たりを優先するために「北側」に配置されることが一般的です。
・日照時間が短い → 雨水や結露水が蒸発せず、建材中に長く留まる
・直射日光が当たらない → 一度濡れると乾燥しにくい
・通風が悪い → 湿気が滞留しやすい
「乾燥しにくい」という条件は、凍害の必須条件である「水分の残留」を助長します。
理由3:窓サッシ周辺の水分集中
浴室には採光や換気のために窓が設置されることが多いですが、この窓周りも凍害の起点になりやすいポイントです。
【表面結露の流下】
・断熱性能の低いアルミサッシや単板ガラスでは、冬季に激しい表面結露が発生
・この結露水がサッシ枠を伝って外壁面に流れ出る
・窓下のサイディングに局所的な水分過多を引き起こす
浴室の窓下だけが変色していたり、塗膜が剥がれていたりするのは、この「垂れ落ちる水」が原因で局所的な凍害が進行している証拠です。
直貼り工法と通気工法|凍害リスクを決める最大の要因
凍害の発生有無を決定づける最大の構造的要因が、「外壁通気工法」が採用されているかどうかです。
直貼り工法の問題点
直貼り工法とは、透湿防水シートが貼られた構造体(柱・間柱)の上に、直接サイディング材を釘留めする工法です。2000年以前の住宅や一部の低コスト住宅で採用されていました。
致命的な欠陥:サイディングの裏面に「空気の通り道」が存在しない
・水分の逃げ場がない → 内部結露や浸入した雨水が閉じ込められる
・乾燥阻害 → 一度入った水分は蒸発せず、サイディング材に吸収される
・塗装しても無駄 → 裏面からの水分アタックが続き、短期間で塗膜が剥がれる
直貼り工法の外壁に塗装しても、数年で再び剥がれるのはこのためです。
通気工法の優位性
外壁通気工法は、現在の窯業系サイディング施工の標準です。
透湿防水シートの上に「胴縁(どうぶち)」という木材や金物を取り付け、その上にサイディングを施工します。これにより、躯体と外壁材の間に15〜18mm程度の空隙(通気層)が確保されます。
【通気工法の効果】
・排湿機能:通気層内を空気が上下に流れ、壁体内の湿気を屋外へ排出
・乾燥促進:侵入した雨水も乾燥させる
・熱遮断:空気の断熱層として機能
通気工法はサイディングの乾燥状態を維持し、凍害リスクを劇的に低減します。
工法の見分け方
基礎と外壁の境目(水切り板金)を下から覗いて確認します。
・通気工法の場合:外壁材との間に隙間があり、向こう側が見える
・直貼りの場合:隙間が完全に塞がっている
判断が難しい場合は、専門業者に診断を依頼しましょう。
劣化レベルの自己診断
適切な補修方法を選ぶために、現在の劣化状況を把握しましょう。
Level 1:初期症状(要観察・メンテナンス推奨)
基材の破壊は始まっていないが、防水機能が失われている状態。
・チョーキング:外壁を指で触ると白い粉がつく
・コーキング劣化:目地やサッシ周りのシーリング材にひび割れがある
・微細なクラック:髪の毛ほどの細いひび割れが見える
この段階であれば、塗装によるメンテナンスが有効です(ただし通気工法の場合に限る)。
Level 2:中期症状(要補修・凍害進行中)
内部での凍結膨張が始まり、目に見える変形や破壊が生じている状態。
・塗膜の膨れ・浮き:水ぶくれのような膨らみが多数確認できる
・目地付近の反り・浮き:サイディングの端部が反り返り、浮き上がっている
・固定釘周辺のひび割れ:釘の周囲にひび割れが走っている
この段階では塗装は推奨されません。内部に水分を含んだまま表面を塗膜で覆うと、施工後数ヶ月〜1年程度で塗膜が大きく膨れ上がり剥がれてしまいます。
Level 3:末期症状(重度凍害・張替え必須)
基材そのものが破壊され、外壁としての機能を喪失している危険な状態。
・スケーリング:表面が層状に剥がれ落ち、内部のセメント質が露出
・ポップアウト:表面の一部が欠損し、クレーター状の穴が開いている
・ボロボロ状態:指で触れるだけで建材が崩れ落ちる
この段階に至ると、柱や土台の腐朽、断熱材のカビ、シロアリ被害などの二次被害が進行している可能性があります。早急な対応が必要です。
正しい補修方法の選び方
凍害の進行度と工法(直貼りか通気か)に応じて、適切な改修工法を選びましょう。
工法比較一覧
【再塗装】推奨:Level 1のみ/凍害解決力:低(一時的)/費用:低/直貼りの場合は施工不可
【シーリング打替】推奨:Level 1/凍害解決力:中(予防)/費用:低/水の浸入口を塞ぐ基本メンテ
【部分張替】推奨:Level 3/凍害解決力:高(根本解決)/費用:中/下地腐食の確認・補修に最適
【カバー工法】推奨:Level 2〜3/凍害解決力:高(素材変更)/費用:中〜高/金属採用で凍害根絶
【全面張替】推奨:Level 3/凍害解決力:最高/費用:高/直貼りからの是正に最適解
塗装メンテナンス
【適用条件】
・劣化がLevel 1(チョーキング)に留まっている
・基材に浮きや剥がれがない
・通気工法で施工されている
【注意点】
凍害が進行している(Level 2以上)サイディングに塗装を行うことは推奨されない
どうしても塗装する場合は、透湿性の高い塗料を選定すること
部分張り替え
【適用条件】浴室周りなど、特定の面に激しい凍害(Level 3)が集中している
【メリット】
・既存壁を剥がすことで、防水シートの劣化や柱・土台の腐朽を目視確認できる
・直貼りであった場合、通気工法へアップグレードできる
【デメリット】既存部分と新しい部分のデザインを完全に合わせることは難しい
【費用目安】約10万円〜(施工範囲による)
金属サイディングによるカバー工法
【適用条件】
・外壁全体または広範囲に劣化が見られる
・下地の腐食までは進行していない
【メリット】
・金属サイディングは吸水しないため、凍害の心配が皆無
・断熱材一体型を使用すれば、断熱性が向上
・解体撤去費が不要なため、全面張り替えより安価
【注意点】
・内部結露が主原因の場合、既存壁をそのまま残すことで構造体の腐朽が進行するリスク
・事前の含水率調査と確実な通気層の確保が必須
【費用目安】約130万円〜150万円(全体カバー工法の場合)
全面張り替え
【適用条件】
・劣化が著しく、建物全体の防水機能が失われている
・直貼り工法からの完全な是正を望む
【メリット】
・住宅の外皮を新築同様の状態にリセットできる
・内部の腐朽や断熱材の欠損も完全に補修可能
【費用目安】約200万円〜500万円
業者に依頼する際の注意点
安易な塗装提案に注意
凍害が進行している外壁に対して、「塗装で直ります」という提案は要注意です。
【塗装では根本解決にならない理由】
・内部に水分を含んだまま表面を塗膜で覆う
・水分の逃げ場がなくなる
・夏場の温度上昇で内部圧力が極端に高まる
・施工後数ヶ月〜1年で塗膜が剥がれる
結果として、無駄な出費になるだけでなく、被害を拡大させる恐れがあります。
業者に確認すべきこと
「この外壁は直貼りですか、通気工法ですか?」→ 工法を把握しているか
「含水率を測定してもらえますか?」→ 専門的な診断ができるか
「塗装で直りますか?」→ 安易な塗装提案をしないか
「張り替えの場合、通気層は確保できますか?」→ 根本解決を提案できるか
内部からの予防対策
外壁の補修と並行して、凍害の根本原因である「浴室からの湿気漏れ」を抑制する対策も有効です。
窓の断熱改修(内窓・ペアガラス)
浴室の窓は、熱の流出入が最も多い「熱の穴」であり、激しい結露の発生源です。
【内窓(二重窓)の設置】
・既存の窓の内側にもう一つ樹脂製サッシの窓を取り付ける
・既存窓との間に空気層(断熱層)が生まれる
・窓表面の温度が下がりにくくなり、結露の発生が劇的に抑制される
・窓枠から外壁への水垂れがなくなる
ヒートショック対策としても有効です。
ユニットバスへの交換
在来工法(タイル張り)の浴室は、タイル目地の劣化で水が壁裏に回りやすく、断熱材が入っていないケースも多いです。
ユニットバス化することで、建物躯体への湿気移動を物理的に遮断できます。
生活習慣の見直し
リフォームを行わない場合でも、運用での対策が可能です。
・入浴中は換気扇を止める → 暖かい蒸気が換気扇ダクトで急冷され、外壁側で結露するのを防ぐ
・入浴後に換気する → 湿気を効率的に排出
・浴槽の蓋をこまめに閉める → 余分な水蒸気の発散を防ぐ
放置するとどうなる?二次被害のリスク
凍害を放置すると、被害は外壁材の裏側へと進行します。
構造腐朽
サイディングが崩壊すると、防水紙も紫外線に晒され劣化。雨水が構造木材(柱、間柱、土台)に到達し、木材腐朽を引き起こします。
シロアリ被害
湿った木材はシロアリを誘引します。特に浴室周りは地盤面からの湿気もあり、シロアリの侵入経路になりやすい部位です。
柱や土台が食害されると、耐震性が著しく低下し、大規模な補強工事(数百万円規模)が必要になります。
費用の比較
【早期(築10〜15年)】シーリング打ち替えと塗装 → 数十万円〜100万円
【中期(築20年〜)】カバー工法や張り替え → 150万円〜300万円
【末期(放置後)】構造体補修+シロアリ駆除+外壁全面張り替え → 500万円超
凍害のサインを見逃さず、早期に適切な工法で対応することが、トータルの住居維持費を抑える最善策です。
まとめ:凍害は住宅からのSOS
【主原因】凍結融解サイクルによる外壁材の破壊
【浴室周りで多発する理由】内部結露、北面配置、窓サッシからの水垂れ
【構造的欠陥】直貼り工法による通気不全が多い
【塗装の限界】Level 2以上では効果なし、むしろ悪化の恐れ
【正しい対策】部分張替・カバー工法・全面張替で通気層を確保
【内部対策】内窓設置、ユニットバス化、換気の見直し
お風呂周りの外壁がボロボロになっていたら、それは住宅からのSOSです。美観の回復だけでなく、建物の健全性を維持するための適切な処置が必要です。
安易な塗装提案に乗らず、専門診断を受けて正しい工法を選びましょう。
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よくある質問(FAQ)
Q. 凍害は寒冷地だけの問題ですか?
A. いいえ。関東以西の内陸部でも、最低気温がマイナス2度を下回る地域では発生します。「夜間に凍結し、日中に融解する」を繰り返す地域の方が、凍害リスクは高いです。
Q. 塗装で凍害は直りますか?
A. Level 1(チョーキング段階)であれば有効ですが、Level 2以上(膨れ・浮きがある状態)では推奨されません。内部に水分を含んだまま塗装すると、短期間で剥がれます。
Q. 直貼り工法かどうか、自分で確認できますか?
A. 基礎と外壁の境目(水切り板金)を下から覗いて、外壁材との間に隙間があれば通気工法の可能性が高いです。判断が難しい場合は専門業者に診断を依頼しましょう。
Q. カバー工法と張り替え、どちらがいいですか?
A. 下地の腐食がない場合はカバー工法が費用対効果が高いです。下地の確認・補修が必要な場合は張り替えが確実です。
Q. 凍害を予防する方法はありますか?
A. 内窓の設置が効果的です。結露を止め、凍害の水分供給源を断つことができます。また、定期的なシーリング打ち替えと塗装メンテナンスで防水性を維持することも重要です。
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この記事は、塗装業50年の経験と建築物理学の知見に基づいて作成されています。
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