「工事中、何をチェックすればいいか分からない…」
外壁塗装の工事が始まると、多くの施主がこう感じます。現場を見ても良し悪しが判断できない。職人に任せるしかない。
しかし、素人でもできるチェックポイントは意外とたくさんあります。
この記事では、塗装業50年の経験から、施主が自分でできる施工チェックと、写真記録のコツ・撮影ポイントを解説します。専門家を呼ばなくても、スマホ1台で品質管理ができるようになります。
この記事で分かること
- なぜ施主によるセルフチェックが有効なのか
- 工程別のチェックポイント一覧
- 写真記録のコツと撮影ポイント
- 「見えない工事」をチェックする方法
- チェックで問題を発見した時の対処法
なぜ施主によるセルフチェックが有効なのか
「見られている」という意識が品質を上げる
施主がチェックすることには、抑止力効果があります。
私の著書『塗装方程式』でも触れていますが、現場訪問や写真記録を行うだけで、手抜きの抑止力になるのです。
「仕上がれば分からない」と思って作業を省略する職人もいます。しかし、施主が関心を持ち、写真を撮り、質問をしていると、職人も「この施主さんは見ている」と意識します。
これは、防犯カメラがあると犯罪が減るのと同じ原理です。
専門家を呼ばなくても、ある程度のチェックは可能
「素人には分からない」と諦める必要はありません。
確かに、塗膜の厚みを測ったり、塗料の成分を分析したりすることはできません。しかし、以下のようなチェックは素人でも可能です。
- 工程表通りに進んでいるか
- 乾燥時間が取られているか
- 塗り残しやムラがないか
- 養生が丁寧にされているか
- 使用している塗料が契約通りか
これらをチェックするだけでも、重大な手抜きを防ぐことができます。
写真記録は「証拠」になる
万が一、完成後に不具合が見つかった場合、写真記録が証拠になります。
「言った言わない」のトラブルを防ぐためにも、工事中の記録は重要です。特に、塗装は塗ってしまうと下地の状態が見えなくなるため、工程ごとの写真が品質の証明になります。
工程別のチェックポイント一覧
外壁塗装は、以下の工程で進みます。それぞれのチェックポイントを解説します。
1. 足場設置
確認ポイント:
- [ ] 足場がしっかり固定されているか
- [ ] 養生シート(メッシュシート)が張られているか
- [ ] 近隣への配慮(挨拶、養生)がされているか
- [ ] 足場と外壁の間隔は適切か(20〜30cm程度)
写真撮影ポイント:
- 足場全体の写真(四方から)
- 近隣との境界部分
- 養生シートの状態
チェックのコツ:
足場の設置状態は、その後の作業の丁寧さを予測する指標になります。足場がきちんと組まれていれば、作業も丁寧に行われる可能性が高いです。
2. 高圧洗浄
確認ポイント:
- [ ] 洗浄時間は適切か(外壁のみ:半日、外壁+屋根:丸1日が目安)
- [ ] 北側のカビ・藻がきれいに落ちているか
- [ ] 軒天や雨樋の内側も洗浄されているか
- [ ] 窓や植木が汚れていないか
写真撮影ポイント:
- 洗浄前の外壁状態
- 洗浄後の外壁状態(同じアングルで)
- 北側の壁面(カビ・藻の除去状況)
- 軒天や雨樋
チェックのコツ:
高圧洗浄は「見えなくなる工程」です。洗浄後に確認しないと、汚れが残ったまま塗装されてしまいます。特に北側のカビ・藻は要注意。残っていると塗膜の剥がれの原因になります。
3. 下地処理(補修・ケレン)
確認ポイント:
- [ ] ひび割れ(クラック)が補修されているか
- [ ] コーキング(シーリング)の打ち替え・打ち増しがされているか
- [ ] 鉄部のサビが落とされているか(ケレン作業)
- [ ] 旧塗膜の剥がれが処理されているか
写真撮影ポイント:
- ひび割れ箇所の補修前・補修後
- コーキングの打ち替え前・打ち替え後
- 鉄部のケレン前・ケレン後
- 補修材を塗っている作業中の様子
チェックのコツ:
下地処理は塗装の品質を左右する最重要工程です。どんなに高級な塗料を使っても、下地処理が不十分なら早期に剥がれます。補修箇所のビフォー・アフター写真を必ず撮っておきましょう。
4. 養生
確認ポイント:
- [ ] 窓、サッシが丁寧に養生されているか
- [ ] エアコン室外機、給湯器が養生されているか
- [ ] 植木、車、自転車が養生されているか
- [ ] 養生テープがまっすぐ貼られているか
写真撮影ポイント:
- 窓周りの養生状態
- 室外機や給湯器の養生
- 車や植木の養生
- 養生テープのライン(まっすぐかどうか)
チェックのコツ:
養生の丁寧さは、職人の仕事への姿勢を表します。養生テープがまっすぐに貼られていれば、塗装も丁寧に行われる可能性が高いです。
5. 下塗り
確認ポイント:
- [ ] 下塗り材の名前を確認(見積書と一致しているか)
- [ ] 塗り残し・塗りムラがないか
- [ ] 下地への吸い込みムラがないか
- [ ] 乾燥時間は十分に取られているか
写真撮影ポイント:
- 下塗り材の缶(製品名が見えるように)
- 下塗り完了後の外壁全体
- 色の変化(既存色→下塗り後の色)
- 吸い込みムラがある場合はその箇所
チェックのコツ:
下塗りは「色の違い」で確認できます。既存の外壁色から、下塗り材の色(白やグレーが多い)に変わっているか確認しましょう。
6. 中塗り
確認ポイント:
- [ ] 下塗りから十分な乾燥時間が取られているか
- [ ] 中塗り塗料の名前を確認(見積書と一致しているか)
- [ ] 塗り残し・塗りムラがないか
- [ ] 塗料の色が正しいか
写真撮影ポイント:
- 中塗り塗料の缶(製品名が見えるように)
- 中塗り完了後の外壁全体
- 色の変化(下塗り→中塗り後の色)
- 乾燥待ちの状態
チェックのコツ:
中塗りと上塗りは同じ塗料を使うことが多く、色の違いで見分けるのは難しいです。しかし、時間の記録で確認できます。「何時に中塗りが終わったか」をメモしておきましょう。
7. 上塗り
確認ポイント:
- [ ] 中塗りから十分な乾燥時間が取られているか
- [ ] 上塗り塗料の名前を確認(見積書と一致しているか)
- [ ] 塗り残し・塗りムラがないか
- [ ] 仕上がりの色・ツヤに問題がないか
写真撮影ポイント:
- 上塗り塗料の缶(製品名が見えるように)
- 上塗り完了後の外壁全体(四方から)
- 細部(窓周り、軒天、雨樋など)
- 気になる箇所があればアップで
チェックのコツ:
上塗り完了後は、足場がある状態で最終チェックをしましょう。足場を解体してからでは、高所の確認ができません。
8. 付帯部塗装
確認ポイント:
- [ ] 雨樋が塗装されているか
- [ ] 破風・鼻隠しが塗装されているか
- [ ] 軒天が塗装されているか
- [ ] 水切りが塗装されているか
- [ ] 細部に塗り残しがないか
写真撮影ポイント:
- 付帯部の塗装前・塗装後
- 雨樋、破風、軒天の仕上がり
- 細部の塗り際(養生を剥がした後のライン)
チェックのコツ:
付帯部は見落としやすい箇所です。「見積書に含まれているか」を確認し、塗装されているかチェックしましょう。
9. 完了検査(足場解体前)
確認ポイント:
- [ ] 外壁全体に塗りムラがないか
- [ ] 塗り残しがないか
- [ ] 養生の剥がし跡がきれいか
- [ ] 塗料の飛散がないか
- [ ] 付帯部の仕上がりに問題ないか
- [ ] 清掃が行き届いているか
写真撮影ポイント:
- 外壁全体(四方から)
- 各面のアップ写真
- 気になる箇所
- 塗料の空き缶(使用量の証明として)
チェックのコツ:
足場解体前が最後のチャンスです。気になる点があれば、この段階で必ず伝えましょう。足場を解体してからでは、高所の手直しに追加費用がかかることがあります。
写真記録のコツと撮影ポイント
コツ1:同じアングルで「ビフォー・アフター」を撮る
工程ごとの変化を記録するために、同じアングルで撮影しましょう。
例:
- 高圧洗浄前 → 高圧洗浄後
- 下地補修前 → 下地補修後
- 下塗り前 → 下塗り後
- 中塗り前 → 中塗り後
- 上塗り前 → 上塗り後
同じ場所・同じ角度で撮ることで、変化が分かりやすくなります。
コツ2:日付・時刻が分かるようにする
写真には撮影日時が記録されます。この情報が重要です。
例:
- 「下塗り完了:1月8日 16:00」
- 「中塗り開始:1月9日 10:00」
- → 乾燥時間:18時間(十分)
スマホの写真には自動的に日時が記録されますが、念のためメモも取っておくと安心です。
コツ3:全体と部分の両方を撮る
全体写真と部分写真の両方を撮りましょう。
全体写真:
- 外壁全体の仕上がり
- 建物の四方から
- 離れた位置から(全景)
部分写真:
- 窓周り、サッシ際
- 入隅・出隅(角の部分)
- 雨樋、軒天、破風
- 気になる箇所
コツ4:塗料の缶を撮る
使用している塗料の缶を撮影しましょう。
撮影ポイント:
- 製品名がはっきり見えるように
- 下塗り材、中塗り・上塗り塗料、それぞれの缶
- 可能であれば、使用前と使用後(空き缶)
これにより、「契約通りの塗料が使われているか」を確認できます。
コツ5:問題箇所は複数アングルで撮る
気になる箇所を見つけたら、複数のアングルで撮影しましょう。
例:塗りムラを発見した場合
- 遠くから(場所が分かるように)
- 近くから(ムラの状態が分かるように)
- 別の角度から(光の当たり具合を変えて)
1枚だけでは状況が伝わりにくいことがあります。複数枚撮っておくと、職人や担当者に説明しやすくなります。
コツ6:撮影した写真は整理する
撮影した写真は、工程ごとに整理しておきましょう。
おすすめの整理方法:
- フォルダを工程ごとに分ける(「01_足場設置」「02_高圧洗浄」など)
- 写真にメモを追加する(スマホの編集機能を使用)
- クラウドにバックアップする(Google フォト、iCloudなど)
工事が終わった後でも、いつでも確認できるようにしておきましょう。
「見えない工事」をチェックする方法
塗装工事には、完成後には見えなくなる工程があります。これらをどうチェックするか解説します。
見えなくなる工程とは
- 高圧洗浄:塗装すると洗浄状態は見えない
- 下地処理:補修跡は塗料で隠れる
- 下塗り:中塗り・上塗りで見えなくなる
- 乾燥時間:完成後には確認できない
チェック方法1:工程完了時に確認する
各工程が完了したタイミングで、その日のうちに確認しましょう。
例:
- 高圧洗浄完了 → その日のうちに汚れが落ちているか確認
- 下地補修完了 → 塗装前にひび割れ補修を確認
- 下塗り完了 → 中塗り前に塗り残しがないか確認
「明日確認しよう」と思っていると、次の工程が始まってしまいます。
チェック方法2:写真・動画での報告を依頼する
見えない箇所(屋根、高所など)は、写真や動画での報告を依頼しましょう。
依頼の例:
「屋根の高圧洗浄、自分では見られないので、完了後に写真を送っていただけますか?」
「下地補修の箇所、ビフォー・アフターの写真をいただけると安心です」
良い業者は、このような依頼に快く応じてくれます。
チェック方法3:工程表と照らし合わせる
工程表を見て、予定通りに進んでいるかを確認しましょう。
確認ポイント:
- 下塗り→中塗り→上塗りが別の日になっているか
- 各工程の間に乾燥日が設けられているか
- 予定より極端に早く進んでいないか
「1日で3回塗り」は乾燥時間が不足しています。要注意です。
チェック方法4:乾燥時間を記録する
乾燥時間の記録は、品質管理の重要なポイントです。
記録の例:
このような記録があれば、「乾燥時間が守られた」という証拠になります。
チェックで問題を発見した時の対処法
対処法1:その場で伝える
問題を発見したら、その場で職人に伝えましょう。
伝え方の例:
「ここ、塗り残しのように見えるんですが、確認してもらえますか?」
「この部分、ムラに見えるんですが、これは後で直りますか?」
責めるような言い方ではなく、「確認してほしい」というスタンスで伝えましょう。
対処法2:写真を撮って記録する
問題箇所を発見したら、必ず写真を撮りましょう。
口頭で伝えるだけでは、「言った言わない」になることがあります。写真があれば、客観的な証拠として使えます。
対処法3:担当者(営業・現場監督)に連絡する
職人に伝えても改善されない場合は、契約した会社の担当者に連絡しましょう。
連絡の例:
「〇〇の部分が気になるので、確認していただけますか?写真も撮っていますので、お送りします」
対処法4:書面で記録を残す
重大な問題が見つかった場合は、書面で記録を残しましょう。
記録する内容:
- 発見日時
- 問題の内容
- 写真
- 伝えた相手と内容
- 対応の結果
メールやLINEで連絡すると、自動的に記録が残るので便利です。
セルフチェック用のチェックリスト【保存版】
工事中に使えるチェックリストです。印刷して現場確認に使ってください。
足場設置
- [ ] 足場がしっかり固定されている
- [ ] 養生シートが張られている
- [ ] 近隣への配慮がされている
- [ ] 📷 足場全体の写真を撮った
高圧洗浄
- [ ] 洗浄時間が適切(半日〜1日)
- [ ] 北側のカビ・藻が落ちている
- [ ] 軒天、雨樋内側も洗浄されている
- [ ] 📷 洗浄前後の写真を撮った
下地処理
- [ ] ひび割れが補修されている
- [ ] コーキングが打ち替えられている
- [ ] 鉄部のサビが落とされている
- [ ] 📷 補修前後の写真を撮った
養生
- [ ] 窓、サッシが丁寧に養生されている
- [ ] 室外機、給湯器が養生されている
- [ ] 養生テープがまっすぐ貼られている
- [ ] 📷 養生状態の写真を撮った
下塗り
- [ ] 下塗り材の缶を確認した
- [ ] 塗り残し・塗りムラがない
- [ ] 乾燥時間が取られている
- [ ] 📷 下塗り後の写真と缶の写真を撮った
中塗り
- [ ] 中塗り塗料の缶を確認した
- [ ] 塗り残し・塗りムラがない
- [ ] 乾燥時間が取られている
- [ ] 📷 中塗り後の写真と缶の写真を撮った
上塗り
- [ ] 上塗り塗料の缶を確認した
- [ ] 塗り残し・塗りムラがない
- [ ] 仕上がりの色・ツヤに問題ない
- [ ] 📷 上塗り後の写真と缶の写真を撮った
完了検査(足場解体前)
- [ ] 外壁全体に塗りムラがない
- [ ] 塗り残しがない
- [ ] 付帯部の仕上がりに問題ない
- [ ] 清掃が行き届いている
- [ ] 📷 完成写真を四方から撮った
- [ ] 📷 塗料の空き缶の写真を撮った
よくある質問(FAQ)
Q. 毎日現場に行かないとダメですか?
A. 毎日行く必要はありませんが、以下のタイミングでは確認をおすすめします。
- 高圧洗浄完了後
- 下塗り完了後
- 中塗り完了後
- 上塗り完了後(足場解体前)
最低でも足場解体前の最終チェックは必ず行いましょう。
Q. 仕事で日中は現場に行けません…
A. 写真報告を依頼しましょう。業者に「毎日の作業内容を写真で送ってほしい」とお願いすれば、多くの業者は対応してくれます。施工管理アプリを使うと、自動で通知が届くので便利です。
Q. 素人がチェックしても意味がありますか?
A. 十分意味があります。専門的なことは分からなくても、「見ている」という姿勢を示すことが大切です。それだけで職人の意識が変わり、丁寧な仕事につながります。
Q. 問題を指摘したら、職人との関係が悪くなりませんか?
A. 伝え方次第です。責めるような言い方ではなく、「確認してほしい」「教えてほしい」というスタンスで伝えれば、多くの職人は丁寧に対応してくれます。良い職人は、施主の関心を歓迎します。
Q. 写真は何枚くらい撮ればいいですか?
A. 多いほど良いですが、目安としては各工程で10〜20枚程度。全体・部分・気になる箇所をバランスよく撮りましょう。スマホなら枚数に制限はないので、迷ったら撮っておくのがおすすめです。
まとめ:セルフチェックで品質を守ろう
施主によるセルフチェックは、専門家を呼ばなくてもできる品質管理です。
セルフチェックのポイント:
- 工程ごとに確認する
- 写真で記録を残す
- 同じアングルでビフォー・アフターを撮る
- 塗料の缶を撮影する
- 問題があればその場で伝える
写真撮影のコツ:
- 日付・時刻が分かるように
- 全体と部分の両方を撮る
- 問題箇所は複数アングルで
- 撮影した写真は整理する
「素人には分からない」と諦めず、関心を持ってチェックすることが大切です。それだけで、手抜き防止と品質向上につながります。
施工管理アプリでセルフチェックを効率化
施工管理アプリを使えば、セルフチェックがもっと簡単になります。
- 21工程のカンバンボードで進捗を可視化
- 工程完了時にLINEで自動通知
- 写真を工程ごとに自動整理
- チェックリスト機能で確認漏れを防止
- 乾燥時間の自動計算
「何をチェックすればいいか分からない」という方も、アプリがガイドしてくれます。
関連記事
この記事は、塗装業50年の経験を持つ職人監修のもと作成されています。
→ 自社施工の塗装店を見分ける3つの質問|下請けに出す業者との違い
→ 足場設置で確認すべき3つのポイント|契約前チェックリスト
見積書、このままで大丈夫?
50年の現場経験を持つ診断アドバイザーが、あなたの見積書をチェックします。 適正価格か、工程に問題はないか、第三者の目で確認してみませんか?
無料で相談する※ 営業目的の連絡は一切いたしません
プロが使う人工数比較シートを無料プレゼント
見積書の「人工数」を比較して、手抜き業者を見抜く
※ 個人情報は厳重に管理し、第三者に提供することはありません