「ちょっとお願いがあるんですけど…」
外壁塗装の工事中、施主さんからこんな声をかけられることがあります。
多くは工事に関する質問や相談です。それは大歓迎。むしろ、気になることは遠慮なく聞いてほしいと思っています。
しかし、ごく一部ですが、工事とは全く関係のないお願いをされることがあります。
この記事では、外壁塗装工事における施主と職人の関係について、職人の立場からお伝えしたいことがあります。
実際にあった「お願い」
50年塗装業に携わる中で、工事とは関係のないお願いを受けることがありました。
- ピアノを別の部屋に移動してほしい
- 大きなソファを廃棄場所まで運んでほしい
- 重い家具を2階から1階に下ろしてほしい
- 庭の木を切ってほしい
- 物置の整理を手伝ってほしい
一度や二度なら、お手伝いすることもあります。職人も人間ですから、困っている方の力になりたいという気持ちはあります。
しかし、これが何度も続くと話は変わってきます。
職人は「時間の切り売り」をしている
ここで知っておいていただきたいことがあります。
職人は「時間の切り売り」をしています。見積書に書かれている金額は、職人がその工事に費やす時間に対する対価です。
「人工(にんく)」という単位があるように、職人1人が1日働く時間が、そのまま品質を作る時間になります。
下地処理に3人工かければ、3日分の丁寧な作業ができます。2人工に減れば、2日分しか作業できません。
工事と関係のない作業に時間を使えば、その分、塗装作業に使える時間が減ります。
ピアノの移動に30分、ソファの廃棄に1時間…これが積み重なると、本来の塗装作業に使うはずだった時間がどんどん削られていきます。
削られるのは「下地処理」の時間
工事の時間が足りなくなったとき、職人はどこで調整するでしょうか。
答えは「下地処理」です。
塗装工程(下塗り・中塗り・上塗り)は、仕上がりに直接見える部分なので省略しにくい。しかし、下地処理(ケレン・高圧洗浄・補修など)は、塗ってしまえば見えなくなります。
時間がなくなると、見えない部分から削られるのです。
下地処理の時間が削られれば、塗料の密着性が落ち、数年で剥がれや膨れが発生するリスクが高まります。
つまり、工事と関係ない作業を頼むことは、巡り巡って自分の家の塗装品質を下げることにつながるのです。
「お金を払っているから」という誤解
「お金を払っているんだから、少しくらい頼んでもいいでしょう」
そう思う方もいるかもしれません。
しかし、お支払いいただいている金額は「外壁塗装工事」に対する対価です。ピアノの移動費やソファの廃棄費は含まれていません。
もし追加の作業を依頼されるなら、本来は別途費用が発生するものです。
そして何より、お金を払ったからといって、職人を下僕のように扱っていいわけではありません。
職人も人間です。尊重されていると感じれば、自然と丁寧な仕事をしたくなります。逆に、雑に扱われていると感じれば、モチベーションは下がります。
塗装の品質は「品質=やる気×技術×時間」で決まります。やる気を削ぐ関係は、品質にも影響するのです。
外壁塗装は「協力プロジェクト」
外壁塗装は、施主と職人が協力して行うプロジェクトです。
施主は工事がスムーズに進むよう環境を整え、職人は持てる技術と時間を最大限に使って良い仕上がりを目指す。お互いが役割を果たすことで、満足のいく結果が生まれます。
施主にできる協力はたくさんあります。
- 工事前に外壁周りの荷物を移動しておく
- 工事中は窓の開閉ルールを守る
- 気になることがあれば早めに相談する
- 職人に気持ちよく働いてもらえる環境を作る
これらは「お願い」ではなく、良い工事のための「協力」です。
良い関係が良い仕上がりを生む
職人の世界では、こんな言葉があります。
「お施主さんの家を塗っているんじゃない。お施主さんと一緒に家を守っているんだ」
良い関係で仕事ができると、職人は自然と「この家のためにもうひと手間かけよう」と思うものです。
逆に、関係がギクシャクしていると、「契約通りにやればいいか」という気持ちになってしまうこともあります。同じ職人でも、関係性によって仕上がりに差が出ることがあるのです。
気になることは「工事のこと」を聞いてください
工事中、気になることがあれば遠慮なく聞いてください。
- 今日はどの工程をやっていますか?
- 乾燥時間は足りていますか?
- ここの補修はどうなっていますか?
こういった質問は大歓迎です。むしろ、関心を持って見てくださる施主さんの現場は、職人も気が引き締まります。
施工管理アプリを使えば、工程ごとの進捗を写真で共有できます。お互いの情報共有がスムーズになり、良い関係が築きやすくなります。
まとめ:パートナーとして接してください
外壁塗装は、数十万円から百万円以上かかる大きな工事です。その品質を左右するのは、塗料のグレードだけではありません。
職人との関係も、品質に影響します。
お金を払う側、受け取る側という関係ではなく、「一緒に家を守るパートナー」として接していただければ、職人は必ず応えます。
工事と関係のない作業を何度も頼むのではなく、工事に集中できる環境を作ること。それが、結果的にあなたの家の品質を上げることにつながります。
良い関係が、良い仕上がりを生む。これは、50年塗装業に携わってきた経験から、自信を持って言えることです。
関連記事
職人の仕事や見積書の見方について、さらに詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
見積書、このままで大丈夫?
50年の現場経験を持つ診断アドバイザーが、あなたの見積書をチェックします。 適正価格か、工程に問題はないか、第三者の目で確認してみませんか?
無料で相談する※ 営業目的の連絡は一切いたしません
プロが使う人工数比較シートを無料プレゼント
見積書の「人工数」を比較して、手抜き業者を見抜く
※ 個人情報は厳重に管理し、第三者に提供することはありません