ホーム/コラム/外壁塗装の下地処理|手抜きを見抜く7つのチェックポイント

外壁塗装の下地処理|手抜きを見抜く7つのチェックポイント

「最高級の無機塗料を塗ったのに、3年で剥がれてきた」

この失敗の原因は、塗料の品質ではなく下地処理の不備にあります。

下地処理とは、高圧洗浄、ケレン(錆落とし・研磨)、クラック補修といった工程のこと。塗装完了後には新しい塗膜によって完全に隠蔽されてしまうため、「不可視の工程」と呼ばれます。

この不可視性こそが、悪意ある業者が工程を省略する最大のインセンティブになっています。

この記事では、下地処理の手抜きを見抜くための7つのチェックポイントを解説します。

なぜ下地処理が重要なのか

塗膜が密着するメカニズム

塗装とは、単に色を付ける行為ではありません。建物の外装材(基材)に対して、塗料を化学的・物理的に結合させ、一体化した保護層を形成するプロセスです。

塗膜が密着する2つの力:

1. 投錨効果(アンカー効果)

  • 基材表面の微細な凹凸に塗料が入り込み、硬化することで物理的に食い込む
  • 表面が汚れやチョーキング粉で覆われていると、塗料は凹凸に到達できない

2. 化学的結合

  • 下塗り材が基材に浸透して内部で硬化し、強固な層を作る
  • カビや藻が残留していると、化学的な結合が阻害される

下地処理を省略するとどうなるか

早期剥離:劣化した旧塗膜(死膜)を除去せずに塗装 → 1〜3年以内に発生

内部腐食:錆を完全に除去せずに塗装 → 表面は綺麗でも内部で進行

防水機能の欠如:クラックを適切に埋めずに塗装 → 塗膜破断・雨水侵入

不適切な下地処理の上に施工された最高級フッ素塗料は、適切な下地処理の上に施工された汎用シリコン塗料よりも遥かに短命です。

チェックポイント1:現地調査の「時間」

調査時間と信頼性の相関

最も客観的に観測できる指標は「調査に要した時間」です。

15分未満:外周を一周、目視で面積確認 → 信頼性は極めて低い

30分前後:面積の実測、主要な劣化箇所の写真撮影 → 標準

60分以上:屋根の確認、クラック幅測定、打診検査 → 信頼性が高い

なぜ短時間調査が危険か

短時間で調査を終える業者は、個別の劣化状況(カビの根の深さ、旧塗膜の付着強度など)を見ていません。

彼らは「坪単価×面積」というどんぶり勘定で見積もりを作成しており、「通常以上の労力を要する下地処理」のコストは含まれていません。

現場で手間のかかる下地処理が必要だと判明しても、予算不足を理由に見なかったことにされるリスクが高いのです。

チェックポイント2:調査担当者の「資質と装備」

誰が調査に来たか

一級塗装技能士・外装劣化診断士:劣化の原因と適切な処置方法まで判断可能

建築士:構造的な問題も含めて判断可能

営業担当者のみ:劣化の「現象」は見えても「原因」と「処置」は判断困難

調査器具を持っているか

持っているべき道具:

  • クラックスケール:ひび割れの幅を測る定規
  • 打診棒:モルタルの浮きを確認する道具
  • 水分計:壁体内の含水率を測る

手ぶらで来て、目視だけで帰る業者は、下地処理の重要性を認識していない可能性が高いです。

チェックポイント3:調査報告書の「精度」

良い報告書 vs 悪い報告書

良い報告書の例:

「南面外壁に幅0.5mmのクラックを確認。Uカット工法による補修およびエポキシ樹脂注入が必要。」

悪い報告書の例:

口頭で「壁が傷んでいますね」と言うのみ。または「外壁全体:劣化あり」という大雑把な記述。

なぜ精度が重要か

診断結果が具体的であれば、後の見積もり内容(下地処理の項目)との整合性が取れます。

逆に、診断が曖昧な業者は、下地処理の内容も曖昧にし、現場の判断で省略する余地を残そうとします。

チェックポイント4:見積書の「一式」表記

「下地処理一式」の危険性

高リスクな記載例:

「高圧洗浄・下地処理工事... 一式... 50,000円」

信頼できる記載例:

  • 高圧トルネード洗浄(15MPa)... 150m²... @200円... 30,000円
  • ひび割れ補修(Uカット・シーリング充填)... 25m... @1,500円... 37,500円
  • 旧塗膜除去(ケレン3種)... 40m²... @800円... 32,000円

「一式」が危険な理由

「一式」と記載された場合、具体的に何をするのかが契約上定義されていません。

業者が「ホースで水をかけただけ」で「下地処理をした」と主張しても、契約違反を問うことが難しくなります。

詳細な内訳(m数、m²数、単価)が記載されていることは、その作業を確実に実施するという業者のコミットメントです。

チェックポイント5:ケレンの「等級」

ケレンとは

ケレン(Clean が語源)とは、錆落としや旧塗膜の除去作業のこと。日本建築学会の規格により1種から4種までの等級があります。

1種:金属地肌を完全に露出(ブラスト装置使用)→ 住宅ではほぼ使用しない

2種:錆・劣化塗膜を電動工具で除去(ディスクサンダー等)→ 単価1,000〜2,000円/m²

3種:浮いた錆・塗膜を手工具で除去(スクレーパー、ワイヤーブラシ)→ 単価500〜1,000円/m²

4種:表面の汚れを落とす程度(サンドペーパー)→ 単価200〜400円/m²

「死膜」と「活膜」の概念

活膜:基材に強固に密着し、保護機能を維持している旧塗膜

死膜:浮き、割れ、錆が発生し、付着力を失った旧塗膜

手抜き業者は「死膜」を撤去せずに「活膜」として扱おうとします。

死膜をスクレーパーで削り落とす作業は多大な労力と時間を要するからです。

業者への質問

「この剥がれかけている部分はどこまで剥がしますか?」

良い反応:「浮いている部分は全て撤去(3種ケレン以上)します」

危険な反応:「上から厚く塗って固めますから大丈夫です」

死膜の上に新しい塗料を塗っても、下地ごと剥がれる運命にあります。

チェックポイント6:施工中の「作業時間」

工程ごとの標準時間

高圧洗浄:半日〜1日 → 短すぎると洗浄圧力不足、洗い流し不十分

乾燥時間:24〜48時間 → 短いと水分を含んだ壁に塗装→膨れの原因

ケレン(鉄部):状態により1〜3日 → 短いと錆の除去不十分→再発

危険信号

  • 高圧洗浄が1〜2時間で終わる
  • 洗浄した翌日にすぐ塗装を開始する
  • 鉄部があるのに電動工具が見当たらない

工程表を確認し、洗浄と塗装の間に十分な乾燥期間が設けられているかチェックしてください。

チェックポイント7:「写真提出」の要求

最も効果的な牽制策

手抜きを防ぐ最も効果的な方法は、「各工程の証拠写真を要求すること」です。

要求すべき写真:

  • 高圧洗浄中の写真(汚れが落ちている様子)
  • クラック補修後の写真(塗装する前)
  • 鉄部のケレン後の写真(錆止め塗装を塗る前)
  • シーリング撤去後の写真(目地が空っぽの状態)

なぜ効果的か

手抜き業者は、ケレンを中途半端に終えた後、すぐに錆止め塗料を塗って隠そうとします。

契約時に「下地処理完了後、上塗りする前に写真を撮って送ってほしい」と伝えておくことで、手抜きへの心理的障壁を高められます。

素材別:下地処理の確認ポイント

モルタル外壁

最大のリスク:クラック(ひび割れ)

確認事項:ヘアクラック(幅0.3mm未満)と構造クラック(幅0.3mm以上)をどう区別して補修するか

正解:「ヘアクラックはフィラーで対応、構造クラックはUカットしてシーリング充填」

手抜き:「全部コーキングを刷り込んでおきます」(すぐに再発)

窯業系サイディング

最大のリスク:目地シーリングの劣化

確認事項:シーリングは「打ち替え」か「増し打ち」か

正解:「原則として既存シーリングを全撤去して打ち替え」

手抜き:「全面的に増し打ちで対応」(撤去の手間を省いている)

※サッシ周りなど、カッターを入れると防水紙を傷つけるリスクがある箇所は「増し打ち」が正解の場合もあります。この使い分けを論理的に説明できるかが鍵です。

鉄部(屋根・手すり等)

最大のリスク:錆の再発

確認事項:ケレンの程度と錆転換剤の使用有無

正解:「赤錆が酷い箇所は電動工具で削ります」

手抜き:「高性能な錆止め塗料を塗るから大丈夫です」(ケレンを省略しようとしている)

業者への質問チェックシート

現地調査で聞くこと

「調査にはどのくらいの時間がかかりますか?」

  • 良い回答:30分〜1時間
  • 危険な回答:10分程度

「屋根の状態はどうやって確認しますか?」

  • 良い回答:ハシゴで登る、高所カメラ、ドローン
  • 危険な回答:下から見える範囲で判断

見積もり説明で聞くこと

「ケレンは何種で行いますか?」

  • 良い回答:電動工具を使うので2種(または状況により3種)
  • 危険な回答:ケレン一式でやります

「剥がれかけた塗料はどうしますか?」

  • 良い回答:浮いている部分は完全に除去します
  • 危険な回答:上から固める塗料を塗るので大丈夫

「大きなひび割れはどう補修しますか?」

  • 良い回答:カットしてシーリングを充填(Uカット)
  • 危険な回答:コーキングを刷り込んでおきます

契約前に確認すること

「下地処理完了時の写真をいただけますか?」

  • 良い回答:工程ごとの写真台帳を作成します
  • 危険な回答:写真は撮っていません

優良業者の特徴

下地処理を重視する業者の見分け方

  1. 「持ちが良い」の根拠が塗料ではなく施工にある

「どれだけ良い塗料でも下地がダメなら3年で剥がれます。だからウチは下地に時間をかけます」

  1. 劣化診断報告書が詳細でネガティブ情報を隠さない

建物の悪い状態を隠さず、写真付きで率直に指摘

  1. 見積もりが細分化されている

「一式」が少なく、m数や箇所数が明記されている

  1. 保証内容に免責事項が明記されている

「何でも保証します」ではなく、物理的に不可能なことと可能なことの境界線を明確にしている

まとめ

外壁塗装における下地処理は、建物の寿命を左右する心臓部。この工程を省略する業者を見分けるための7つのチェックポイント:

  1. 現地調査の時間:30分以上かけているか
  2. 調査担当者の資質:資格と道具を持っているか
  3. 調査報告書の精度:具体的な記述があるか
  4. 見積書の「一式」表記:内訳が明記されているか
  5. ケレンの等級:死膜の処理方法を即答できるか
  6. 施工中の作業時間:乾燥時間を確保しているか
  7. 写真提出の要求:各工程の証拠を残せるか

塗装工事は完成品を購入するのではなく、現場で作り上げるサービスを購入するもの。

安易な値引きや魔法のような高耐久塗料の言葉に惑わされず、地味だが本質的な「下地処理」に真摯に向き合う業者を選定すべきです。

見積書、このままで大丈夫?

50年の現場経験を持つ診断アドバイザーが、あなたの見積書をチェックします。 適正価格か、工程に問題はないか、第三者の目で確認してみませんか?

無料で相談する

※ 営業目的の連絡は一切いたしません

プロが使う人工数比較シートを無料プレゼント

見積書の「人工数」を比較して、手抜き業者を見抜く

※ 個人情報は厳重に管理し、第三者に提供することはありません