「ちゃんと3回塗りしてくれたかな…」
「塗料を薄めすぎていないかな…」
外壁塗装の品質を心配する施主さんは多いですが、実は簡単に確認できる方法があります。
それが「塗料の空き缶を見せてもらう」こと。
空き缶の数を確認するだけで、適正な量の塗料が使われたかどうかが分かります。専門知識がなくても、誰でもできるチェック方法です。
この記事では、塗装業50年の経験から、なぜ空き缶の確認が重要なのか、どう確認すればいいのかを解説します。
この記事で分かること
- なぜ塗料の空き缶を確認すべきなのか
- 塗料が「足りない」とどうなるのか
- 適正な缶数の計算方法
- 空き缶を見せてもらうタイミングと伝え方
- 空き缶で確認すべき5つのポイント
なぜ塗料の空き缶を確認すべきなのか
塗料の「間引き」という手抜き
外壁塗装の手抜きには様々な種類がありますが、最も発見しにくいのが塗料の「間引き」です。
間引きとは:
- 見積もりより少ない塗料しか使わない
- 規定より薄く希釈して塗る
- 3回塗りのはずが2回で済ませる
これらはすべて、仕上がりを見ただけでは分かりません。
塗り終わった外壁は、適正量を塗っても、間引きしても、見た目はほとんど同じ。しかし、耐久性には大きな差が出ます。
見積書の塗料代はどこへ?
見積書には「シリコン塗料 ○○缶」と記載されています。
しかし、実際に使った缶数を確認する施主はほとんどいません。業者がその気になれば、見積もりより少ない塗料で済ませ、差額を利益にすることが可能です。
誠実な業者であれば、そんなことはしません。しかし、施主が確認しないことを良いことに、塗料を間引く業者が存在するのも事実です。
空き缶は「動かぬ証拠」
空き缶の数は、嘘がつけない証拠です。
- 写真は加工できる
- 口頭の説明は後から変えられる
- 作業報告書は都合よく書ける
しかし、空き缶の数は誤魔化せません。
10缶必要な工事で、空き缶が7缶しかなければ、3缶分の塗料が使われていないことが一目瞭然です。
塗料が「足りない」とどうなるのか
塗膜が薄くなる
塗料が足りなければ、当然ながら塗膜が薄くなります。
適正な塗膜の厚さ:
- 下塗り:30〜50μm(マイクロメートル)
- 中塗り:25〜35μm
- 上塗り:25〜35μm
- 合計:80〜120μm
塗料を間引けば、この厚さを確保できません。薄い塗膜は、紫外線や雨風に弱く、早期に劣化します。
耐久年数が短くなる
シリコン塗料の耐久年数は10〜15年と言われていますが、これは適正な厚さで塗った場合の話です。
塗料を間引いて塗膜が薄ければ、耐久年数は大幅に短くなります。
例:
- 適正量で塗装:12年持つ
- 2割間引き:8〜9年で劣化
- 3割間引き:6〜7年で劣化
100万円払って「12年持つ」はずが、「7年で塗り替え」になれば、大きな損失です。
チョーキングが早く起きる
チョーキングとは、外壁を触ると白い粉がつく現象。塗膜が劣化しているサインです。
塗膜が薄いと、このチョーキングが通常より早く発生します。「まだ5年なのに、もう粉が出ている」という場合、塗料の間引きが原因かもしれません。
塗りムラ・色ムラが出やすい
塗料が足りないと、均一に塗ることが難しくなります。
職人が「塗料が足りなくなりそう」と感じると、無意識に薄く塗ろうとします。その結果、塗りムラや色ムラが発生しやすくなります。
適正な缶数の計算方法
基本の計算式
塗料の必要缶数は、以下の計算式で求められます。
必要缶数 = 塗装面積 ÷ 1缶あたりの塗り面積
例:30坪住宅の外壁塗装
- 外壁面積:約120㎡
- 1缶(15kg)あたりの塗り面積:約50〜60㎡
- 3回塗りの場合:120㎡ × 3回 = 360㎡分必要
360㎡ ÷ 55㎡/缶 ≒ 6.5缶 → 7缶必要
※下塗り材は別途必要
塗料ごとの標準塗り面積
塗料メーカーは、1缶あたりの「標準塗り面積」を公表しています。
主な塗料の標準塗り面積(15kg缶の場合):
- 下塗り材(シーラー):80〜120㎡
- シリコン塗料:50〜70㎡
- フッ素塗料:45〜65㎡
- 無機塗料:40〜60㎡
※製品によって異なります。カタログやメーカーサイトで確認できます。
見積書の缶数をチェック
見積書に記載された缶数が、計算上の必要缶数と大きくかけ離れていないか確認しましょう。
チェックポイント:
- 外壁面積は正しく計測されているか
- 3回塗り分の数量が計上されているか
- 下塗り材と上塗り材が別々に記載されているか
極端に少ない缶数で見積もられている場合は、要注意です。
空き缶を見せてもらうタイミングと伝え方
ベストなタイミング
足場解体前がベストです。
足場を解体すると、空き缶は産業廃棄物として処分されてしまいます。解体前であれば、現場に空き缶が残っている可能性が高いです。
各工程の完了時に確認するのも効果的です。
- 下塗り完了時:下塗り材の空き缶を確認
- 中塗り完了時:中塗り分の空き缶を確認
- 上塗り完了時:上塗り分の空き缶を確認
契約時に伝えておく
最も確実なのは、契約時に「空き缶を見せてください」と伝えておくことです。
事前に伝えておけば、業者も準備ができます。突然言われるより、事前に伝えられた方が業者も対応しやすいです。
伝え方の例文
契約時:
「工事完了後に、使用した塗料の空き缶を見せていただけますか?記録として写真に残しておきたいので」
工事中:
「お疲れ様です。空き缶はどこに保管されていますか?見積もりの缶数と照らし合わせたいので、後で見せてください」
完了検査時:
「完了検査の際に、空き缶も確認させてください。記録として残しておきたいと思います」
業者の反応で信頼度が分かる
空き缶の確認を依頼したときの反応で、業者の信頼度が分かります。
信頼できる業者の反応:
- 「もちろんです。こちらにまとめてあります」
- 「写真も撮っておきましょうか?」
- 「缶に書いてある製品名も確認できますよ」
要注意な業者の反応:
- 「もう処分してしまいました」
- 「なぜそんなことを確認するのですか?」
- 「缶数は見積もり通りです」(見せずに口頭だけ)
空き缶を見せることを渋る業者は、何か隠したいことがある可能性があります。
空き缶で確認すべき5つのポイント
1. 缶数が見積もりと一致しているか
最も基本的なチェック項目です。
見積書に「シリコン塗料 8缶」と記載されているなら、空き缶は8缶あるはず。大幅に少なければ、塗料が間引かれた可能性があります。
注意点:
- 少し多い分には問題ない(予備として多めに発注することがある)
- 大幅に少ない場合は要確認
- 未開封の缶が残っている場合、その分は返金対象
2. 製品名・品番が見積もりと一致しているか
缶に記載された製品名を確認しましょう。
見積書に「日本ペイント パーフェクトトップ」と記載されているのに、缶には別の製品名が書いてあれば、契約と異なる塗料が使われたことになります。
確認すべき情報:
- メーカー名
- 製品名
- 品番
- 色番号
3. 色番号が正しいか
色は「品番」で管理されています。
「ND-375」「22-85B」など、アルファベットと数字の組み合わせで指定されます。契約時に決めた色番号と、缶に記載された色番号が一致しているか確認しましょう。
4. 缶が完全に空になっているか
空き缶の中を覗いてみましょう。
塗料が大量に残っている缶が何缶もあれば、その分は外壁に塗られていないことになります。多少の残りは仕方ありませんが、明らかに大量に残っていれば要確認です。
5. 希釈剤(シンナー等)の量
塗料は水やシンナーで希釈して使います。
希釈率の目安:
- 水性塗料:5〜10%(水で希釈)
- 溶剤塗料:5〜15%(シンナーで希釈)
希釈剤の缶が異常に多い場合、塗料を規定以上に薄めて使っている可能性があります。ただし、これは専門的な判断が必要なため、気になる場合は業者に確認しましょう。
空き缶の写真を記録として残す
撮影すべきアングル
空き缶を確認したら、必ず写真を撮って記録に残しましょう。
撮影すべき写真:
- 全体写真:空き缶を並べた全体像(缶数が分かる)
- ラベル写真:製品名・品番が読めるアップ
- 色番号写真:色番号の表示部分
- 缶の中身:完全に使い切られているか
日付と場所を記録
写真と一緒に、撮影日時と場所を記録しておきます。
スマホのカメラなら、撮影日時は自動で記録されます。さらに確実にするなら、その日の新聞と一緒に撮影するのも有効です。
見積書と照合した記録
空き缶の写真と見積書を照らし合わせ、以下を記録しておきましょう。
- 見積書記載の塗料名と缶数
- 実際の空き缶の塗料名と缶数
- 一致/不一致の有無
- 業者からの説明(不一致があった場合)
よくある質問(FAQ)
Q. 空き缶を見せてもらうのは失礼ではないですか?
A. 失礼ではありません。100万円以上の工事で、使用材料を確認するのは施主の正当な権利です。まともな業者は「確認してくれる施主の方が安心」と思っています。
Q. 缶数が見積もりより少なかった場合、どうすればいいですか?
A. まずは業者に理由を確認しましょう。「外壁の状態が良く、想定より少なく済んだ」など正当な理由があるかもしれません。説明に納得できなければ、差額の返金や追加塗装を求めることができます。
Q. 缶数が見積もりより多い場合は?
A. 多い分には問題ありません。外壁の状態によっては、下塗り材を多く使うことがあります。ただし、追加費用を請求された場合は、事前説明があったか確認しましょう。
Q. 空き缶はどのくらいの期間保管されていますか?
A. 通常、工事完了後1〜2週間で産業廃棄物として処分されます。確認したい場合は、足場解体前か、完了検査のタイミングで依頼しましょう。
Q. 缶のラベルが剥がれていて確認できない場合は?
A. 缶本体に刻印や印字がある場合もあります。それでも確認できない場合は、業者に納品書や発注書の提示を求めることができます。
施工管理アプリで缶数も記録
塗料の使用量を自動計算
施工管理アプリには、塗料の使用量を計算する機能があります。
外壁面積を入力すると、必要な缶数が自動計算されます。見積書の缶数と比較して、適正かどうかを判断できます。
空き缶の写真も記録
アプリに空き缶の写真をアップロードしておけば、クラウドに保存されます。
- 撮影日時が自動記録される
- データが消える心配がない
- いつでも見返せる
万が一のトラブル時に、すぐに証拠として提示できます。
まとめ:空き缶は「品質の証明書」
塗料の空き缶は、工事の品質を証明する「動かぬ証拠」です。
専門知識がなくても、缶数を数えるだけで、適正な量の塗料が使われたかどうかが分かります。
空き缶確認のポイント:
契約時に「空き缶を見せてください」と伝えておく
足場解体前に確認する
缶数が見積もりと一致しているか確認
製品名・品番が契約内容と一致しているか確認
写真を撮って記録に残す
空き缶の確認を依頼して嫌な顔をする業者は、信頼できない業者です。まともな業者なら、むしろ「確認してくれてありがとうございます」と言うでしょう。
100万円を超える工事です。「缶数を数える」という簡単な確認で、品質を担保しましょう。
施工管理アプリで塗料の使用量をチェック
外壁面積から必要缶数を自動計算。見積書との比較も簡単にできます。空き缶の写真もクラウドで保存・管理。
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この記事は、塗装業50年の経験を持つ職人監修のもと作成されています。
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