外壁塗装の見積もりで、意外と見落とされがちなのが「木部」の塗装だ。
破風板、鼻隠し、軒天、窓枠、ウッドデッキ——住宅には様々な木部がある。これらは外壁とは異なる特性を持ち、適切な塗料と施工方法が求められる。
「外壁と同じ塗料で塗っておきます」という業者の言葉をそのまま信じると、数年で剥がれてくる可能性がある。見積もり段階で木部の扱いを確認することが、工事の品質を見極めるポイントになる。
木部塗装が難しい理由
木は「動く」
木材は温度や湿度の変化によって膨張・収縮を繰り返す。
- 夏の湿気:木材が水分を吸って膨張
- 冬の乾燥:水分を放出して収縮
この動きに塗膜が追従できないと、ひび割れや剥離が起きる。外壁用の硬い塗膜は、木の動きについていけない。
木は「呼吸」する
木材は内部に水分を含んでおり、常に外部と水分のやり取りをしている。
- 塗膜で完全に覆うと、内部の水分が逃げられない
- 内部に水分がこもると、塗膜を内側から押し上げる
- 結果として、塗膜の膨れ・剥離が発生
外壁用塗料は「水を通さない」ことを重視するが、木部には「水蒸気を逃がす」性能も必要。
木は「劣化しやすい」
木材は紫外線と水分に弱い。
- 紫外線:木材の繊維を分解し、表面がケバ立つ
- 水分:腐朽菌の温床になり、腐りの原因に
外壁材(サイディングやモルタル)より劣化が早く、塗り替え頻度も高くなる。
雨樋も「動く部材」
木部と同様に注意が必要なのが、塩ビ製の雨樋。
雨樋も温度変化で伸縮するため、硬い塗膜は割れやすい。「外壁と同じ塗料で」と言われたら、雨樋にも適しているか確認が必要だ。
外壁用塗料を木部に塗るとどうなるか
外壁用のシリコン塗料やフッ素塗料を木部にそのまま塗ると、以下の問題が起きやすい。
短期的な問題(1〜3年):
- 塗膜のひび割れ
- 塗膜の剥離(パリパリと剥がれる)
- 塗膜の膨れ
長期的な問題:
- 剥がれた部分から水が浸入
- 木材の腐朽が進行
- 補修費用の増大
外壁は10年以上持つのに、木部は2〜3年で剥がれてきた——こうしたケースは珍しくない。
木部に適した塗料の種類
木部用の塗料は大きく分けて2種類ある。
浸透型(ステイン系)
塗料が木材の内部に浸透するタイプ。
メリット:
- 木の呼吸を妨げない
- 木目を活かした仕上がり
- 剥がれが起きにくい
- 劣化した木材を内部から固める効果
デメリット:
- 防水性はやや劣る
- 耐久年数は短め(3〜5年)
適した場所:
- 木目を見せたい場所(ウッドデッキ、木製フェンス)
- 劣化が進んだ木部の下地処理として
造膜型(靱性塗料)
塗料が表面に膜を作るタイプ。木部専用に配合された「靱性(じんせい)塗料」は、柔軟性があり木の動きに追従できる。
メリット:
- 防水性が高い
- 耐久性が比較的長い(5〜8年)
- しっかりとした保護膜を形成
デメリット:
- 経年で剥がれが生じる可能性
- 剥がれたら再塗装前にケレンが必要
適した場所:
- 破風板、鼻隠し、軒天など耐久性が求められる場所
一般的な外壁用塗料(硬い塗膜)は木部には不向きです。
劣化した木部への対処法
よくある失敗:ボロボロの木材にいきなり造膜
劣化が進んだ木部に、いきなり造膜型塗料を塗ると何が起きるか。
- 木材の表面がボロボロ(繊維が立っている、スカスカになっている)
- その上に塗膜を作る
- 塗膜は木材の表面にしか密着していない
- ボロボロの表面ごと、塗膜が剥がれる
躯体がボロボロの上に造膜しても、一緒に剥がれてしまいます。
正しい手順:浸透系で固めてから造膜
劣化が激しい木部の正しい対処法:
ステップ1:浸透系塗料で木材を固める
- 浸透系塗料(木材強化剤、浸透性シーラー)を塗る
- 劣化した木材の繊維に浸透し、内部から固める
- スカスカだった木材に強度が戻る
ステップ2:下地を整える
- 必要に応じてパテ処理
- ケレンで表面を整える
ステップ3:造膜型塗料で仕上げる
- 固まった下地の上に靱性塗料を塗る
- しっかりした下地があるから、塗膜が密着する
この「浸透→造膜」の順序を守らないと、どんな良い塗料を使っても剥がれる。
見積書でのチェックポイント
チェック1:木部が別項目になっているか
見積書で「外壁塗装 一式」とまとめられていたら要注意。
良い見積書:
- 外壁塗装(サイディング):○○塗料
- 木部塗装(破風・鼻隠し):△△塗料
- 軒天塗装:□□塗料
- 雨樋塗装:◇◇塗料
要注意な見積書:
- 外壁塗装一式:○○塗料 ※木部・雨樋含む
木部・雨樋が別項目になっていれば、業者が「動く部材」の特性を理解している可能性が高い。
チェック2:木部専用塗料の名前が明記されているか
具体的な塗料名を確認する。
- メーカー名と商品名
- 木部専用塗料かどうか
- 浸透型か造膜型か
「外壁と同じ塗料」と書かれていたら、なぜ木部に適しているのか説明を求める。
チェック3:木部の下地処理が含まれているか
木部は外壁以上に下地処理が重要。
- ケレン(旧塗膜の除去、目荒らし)
- 木部用シーラー・プライマー
- 腐朽部分の補修
- 劣化がひどい場合:浸透系での固め作業
「ケレン」が見積書に含まれていなければ、確認が必要。
チェック4:劣化がひどい場合の対応が書かれているか
- 「木部の状態により追加処理が必要な場合があります」などの記載
- 浸透系塗料での下地処理の有無
- 交換・板金カバーの選択肢の提示
見積もり時に業者に聞くべき質問
質問1:「木部には何の塗料を使いますか?」
- 良い反応:「○○メーカーの△△という木部専用塗料を使います」
- 要注意な反応:「外壁と同じシリコンで大丈夫です」
質問2:「外壁用塗料と木部用塗料は何が違いますか?」
- 良い反応:「木は動くので、柔軟性のある塗料を使います」「靱性塗料を使います」
- 要注意な反応:「特に変わりません」「どちらでも持ちます」
質問3:「木部の劣化がひどかった場合、どう対応しますか?」
- 良い反応:「浸透系の塗料で固めてから、上塗りします」「状態によっては交換を提案します」
- 要注意な反応:「塗れば大丈夫です」「上から塗って隠します」
この質問が最重要。ボロボロの木材にいきなり造膜する業者は、早期剥離のリスクが高い。
質問4:「雨樋の塗装はどうしますか?」
- 良い反応:「雨樋も伸縮するので、柔軟性のある塗料を使います」
- 要注意な反応:「外壁と同じで大丈夫です」「雨樋は塗らなくていいです」
質問5:「木部の塗り替え周期はどのくらいですか?」
- 良い反応:「外壁より短く、5年程度を目安に点検をおすすめします」
- 要注意な反応:「外壁と同じ10年は持ちます」
木部が外壁と同じ耐用年数というのは、現実的ではない。正直に説明してくれる業者は信頼できる。
木部の劣化サインと対応の目安
木部の状態によって対応方法が異なります。
- 色褪せ・チョーキング(塗膜の劣化)→ 塗り替えで対応可能
- ひび割れ(塗膜のみ)→ ケレン後に塗り替え
- 剥離(塗膜が浮いている)→ ケレン後に塗り替え
- 木材表面のケバ立ち → 浸透系で固めてから塗装
- 木材のひび割れ → 浸透系で固めてから塗装、または補修
- 腐朽(押すと柔らかい)→ 交換または板金カバー
木材表面が劣化している場合は「浸透→造膜」の順序。表面がケバ立っている、触るとボロボロする、という状態なら、いきなり造膜してはダメ。
板金カバーという選択肢
破風板・鼻隠しの劣化が進んでいる場合、塗装ではなく板金(ガルバリウム鋼板)でカバーする方法もある。
メリット:
- 木部の塗り替えが不要になる
- 長期的にはコストメリットがある場合も
- 腐朽が進んでいても対応できる
デメリット:
- 初期費用が塗装より高い
- 意匠が変わる
見積もり段階で「塗装と板金カバー、どちらがおすすめですか?」と聞いてみるのも良い。状態を見て適切な提案をしてくれる業者は信頼できる。
まとめ
木部塗装のポイントを整理する。
✓木部塗装の確認ポイント
- 木部が別項目になっているか
外壁と一式になっていないか確認
- 木部専用塗料の名前が明記されているか
メーカー名・商品名を確認
- 木部の下地処理(ケレン)が含まれているか
- 劣化がひどい場合の対応が書かれているか
浸透系での固め作業の有無
- 「木部の劣化がひどかった場合、どう対応しますか?」と質問する
最重要質問
木部塗装の成功は、木の特性(動く・呼吸する・劣化しやすい)を理解した施工ができるかどうかにかかっている。見積もり段階で木部の扱いを確認することが、業者の品質意識を見極めるポイントになる。
見積書の内容が適正か不安な方へ
「見積書に木部の塗料が書いていない」
「外壁と同じ塗料で大丈夫と言われたけど、本当?」
「破風板がかなり傷んでいるけど、塗装で対応できる?」
木部に適した塗料が選ばれているか、下地処理が適切か、第三者の目でチェックする見積もり診断サービスをご利用ください。
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