「見積書に塗料名は書いてあるけど、これが正しいのかわからない」
外壁塗装の見積書を見たとき、多くの人は価格の比較に目が行く。しかし、本当にチェックすべきは「その塗料が、その部位の素材に適しているか」という適合性だ。
例えば、こんな見積書を見たことはないだろうか。
外壁塗装(シリコン)... ○○円 破風板塗装(シリコン)... ○○円 雨樋塗装(シリコン)... ○○円 軒天塗装(シリコン)... ○○円
全部同じ塗料。一見シンプルでわかりやすいが、実はこれが手抜き見積もりの典型パターン。
なぜなら、外壁(サイディング)、破風板(木部または窯業系)、雨樋(塩ビ)、軒天(ケイカル板)はそれぞれ素材が異なり、最適な塗料も異なるからだ。
この記事では、見積書で「素材×塗料の適合性」をチェックする方法を解説する。
なぜ部位別に塗料を変える必要があるのか
素材が違えば、最適な塗料も違う
建物は複数の素材でできている。
【外壁】サイディング、モルタル、ALC 【屋根】スレート、金属(ガルバリウム)、瓦 【破風板】木部、窯業系 【軒天】ケイカル板、ベニヤ、金属 【雨樋】塩ビ(PVC) 【雨戸・戸袋】金属(鉄、アルミ) 【水切り】金属
これらの素材は、それぞれ異なる特性を持っている。
・吸水性:モルタルは水を吸う、金属は吸わない
・呼吸性:木部は湿気を出し入れする
・熱伸縮:金属は温度で大きく伸び縮みする
・可塑剤:塩ビには柔軟剤が含まれている
素材の特性を無視した塗料を塗ると、必ず不具合が起きる。
「全部同じ塗料」見積書の問題点
全ての部位に同じ塗料を提案している見積書は、以下の可能性がある。
1. 素材ごとの適合性を考えていない(知識不足)
2. 塗料の種類を減らしてコストカットしている(手抜き)
3. どの素材にも無難に使える汎用品を選んでいる(最適ではない)
「シンプルでわかりやすい」は、必ずしも「良い見積もり」ではない。
見積書チェックポイント1:外壁の塗料
確認すべきこと
・外壁の素材は何か(サイディング?モルタル?ALC?)
・下塗り材は記載されているか(シーラー?フィラー?プライマー?)
・素材に適した下塗りか
【モルタル】適正:微弾性フィラー / NG:薄膜シーラーのみ 【一般サイディング】適正:サーフェーサー、シーラー / NG:厚付け弾性フィラー(熱膨れの原因) 【難付着サイディング】適正:ハイブリッドプライマー(2液)/ NG:通常シーラー(剥離する) 【ALC】適正:浸透性シーラー / NG:非浸透型(密着不良)
❌ 下塗り材の記載がない ❌ サイディングなのに「弾性フィラー」 ❌ 難付着サイディングなのに通常シーラー ❌ 「下塗り一式」で詳細がない
見積書チェックポイント2:破風板・鼻隠しの塗料
確認すべきこと
破風板は木製と窯業系(サイディング系)で塗料が全く異なる。
【木部】適正:木部専用塗料(透湿性あり)、浸透型ステイン / NG:鉄部用ペンキ(剥離する) 【窯業系】適正:外壁と同系統(シリコン、フッ素等)/ NG:弾性塗料(熱膨れ) 【金属】適正:エポキシ系プライマー+上塗り / NG:水性シーラー(密着不良)
❌ 木部なのに「鉄部と同じ塗料」 ❌ 素材の記載がなく、塗料だけ書いてある ❌ 外壁と全く同じ仕様になっている
見積書チェックポイント3:軒天の塗料
確認すべきこと
軒天は湿気がこもりやすい部位。透湿性と防カビ性が重要。
【ケイカル板】適正:軒天専用塗料(EP-G、NAD等)※防カビ機能必須 【ベニヤ】適正:透湿性塗料、浸透型 ※呼吸を止めない 【金属】適正:錆止め+上塗り ※結露対策
❌ 外壁と全く同じ塗料 ❌ 防カビ機能の記載がない ❌ ベニヤなのに造膜型のペンキ
見積書チェックポイント4:雨樋の塗料
確認すべきこと
雨樋のほとんどは硬質塩ビ(PVC)。可塑剤対策が必須。
【下塗り】可塑剤移行防止プライマー → ブリード(ベタつき)防止 【上塗り】弱溶剤ウレタン、シリコン → 密着性確保
❌ 下塗りの記載がない ❌ 「破風板と同じ塗料」(素材が違う) ❌ 外壁用塗料をそのまま適用
よくある間違い:破風と雨樋を同じ塗料に
破風板(木部または窯業系)と雨樋(塩ビ)は素材が全く違う。
【破風板】素材:木部 or 窯業系 → 必要な機能:透湿性、耐候性 【雨樋】素材:塩ビ → 必要な機能:可塑剤移行防止
同じ塗料を塗ると、どちらかで不具合が起きる可能性が高い。
見積書チェックポイント5:雨戸・戸袋の塗料
確認すべきこと
雨戸・戸袋は金属製が多い。防錆対策が重要。
【下塗り】変性エポキシ系プライマー → 防錆、酸素遮断 【上塗り】弱溶剤シリコン、フッ素 → 耐候性、可撓性
❌ 錆止めの記載がない ❌ ケレンの記載がない ❌ 水性シーラー(金属には不向き)
見積書チェックポイント6:屋根の塗料
確認すべきこと
屋根は外壁より紫外線量が多いため、より高耐候な塗料が必要。
【スレート】適正:シリコン以上、できればフッ素 ※外壁より高グレード推奨 【金属】適正:遮熱塗料+エポキシプライマー ※熱対策必須 【瓦】塗装不要(または専用塗料)※塗装が必要か要確認
❌ 外壁より低グレードの塗料 ❌ 金属屋根なのに遮熱機能なし ❌ 瓦に一般塗料(専用品が必要)
見積書チェックポイント7:塗料グレードの統一性
確認すべきこと
部位ごとの耐用年数のバランスをチェック。
【パターン1】外壁フッ素(15年)+付帯部ウレタン(8年)→ 8年後に付帯部だけ劣化→再足場が必要 【パターン2】屋根シリコン(10年)+外壁フッ素(15年)→ 屋根が先に劣化→メンテナンス時期がズレる
【屋根】外壁と同等以上(紫外線量が多いため) 【外壁】シリコン〜フッ素(基準となる部位) 【付帯部】外壁と同等(劣化タイミングを揃える)
見積書チェックシート(まとめ)
✓部位別チェックリスト
- 外壁:素材に適した下塗りか
- 外壁:難付着サイディングの場合、ハイブリッドプライマーか
- 破風板:木部なら透湿性塗料か
- 軒天:防カビ機能はあるか
- 雨樋:可塑剤移行防止プライマーか
- 雨戸:エポキシ系錆止めか
- 屋根:外壁と同等以上のグレードか
- 全体:耐用年数のバランスは取れているか
❌ 全部位が同じ塗料 → 素材別の適合性を考えていない ❌ 下塗りの記載がない → 密着性・防錆の対策が不明 ❌ 「一式」が多い → 詳細が隠されている ❌ 付帯部だけ低グレード → 劣化タイミングがズレる ❌ 破風と雨樋が同じ塗料 → 木部/窯業系と塩ビは素材が違う
業者への質問例
見積もりを受け取ったら、以下の質問をしてみよう。
質問1:素材別の塗料選定
「破風板と雨樋、同じ塗料になっていますが、素材は同じですか?」
・良い回答:「破風は窯業系で雨樋は塩ビなので、下塗りは変えています」
・危険な回答:「どちらも同じので大丈夫です」
質問2:下塗りの選定理由
「この下塗り材を選んだ理由を教えてください」
・良い回答:「サイディングの吸い込みが激しいので浸透性の高いシーラーを選びました」
・危険な回答:「いつも使っているものです」
質問3:グレードバランス
「屋根と外壁の耐用年数はどちらが長いですか?」
・良い回答:「屋根の方が紫外線を受けるので、外壁より高グレードにしています」
・危険な回答:「どちらも同じくらいです」
まとめ
見積書で塗料をチェックする際は、「価格」ではなく「素材×塗料の適合性」を見る。
1. 外壁:素材に適した下塗りか 2. 破風板:木部なら透湿性塗料か 3. 軒天:防カビ機能はあるか 4. 雨樋:可塑剤移行防止プライマーか 5. 雨戸:エポキシ系錆止めか 6. 屋根:外壁と同等以上のグレードか 7. 全体:耐用年数のバランスは取れているか
「全部同じ塗料」は手抜き見積もりの危険信号。
素材ごとに最適な塗料を選定している見積書こそ、信頼できる業者の証だ。
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塗料グレード比較表
耐用年数と価格のバランスを考慮して選びましょう。
| 塗料タイプ | 耐用年数 | 価格帯 | 評価 |
|---|---|---|---|
アクリル系 | 5〜8年 | 安価 | ★☆☆ |
ウレタン系 | 7〜10年 | 比較的安価 | ★☆☆ |
シリコン系おすすめ | 10〜13年 | 中程度 | ★★★ |
ラジカル制御型おすすめ | 12〜15年 | 中程度 | ★★★ |
フッ素系 | 15〜20年 | 高価 | ★★☆ |
無機系 | 15〜25年 | 高価 | ★★☆ |
ポイント:コストパフォーマンスを重視するなら「シリコン系」または「ラジカル制御型」がおすすめです。 長期的なメンテナンス費用を考えると、初期費用が少し高くても耐用年数の長い塗料が経済的な場合もあります。